柿には、甘柿と渋柿があります。
甘柿は生食できますが、渋柿はできません。
じつは渋柿にも多くの糖分が含まれています。
むしろ甘柿よりも糖度が高いほどです。
では、なぜ渋柿は甘くないのでしょうか。
渋柿の渋みの原因はタンニンと呼ばれる物質です。
可溶性ですから、口の中のだ液に溶けます。
それが非常に強い渋みを生じ、味覚を麻痺させます。
そのため甘みがあっても感じられないのです。
しかし柿を天日に干すと、タンニンが不溶性に変わります。
いわゆる「渋みが抜けた」状態です。
正しくは、渋みが抜けるのではなく、感じなくなるのですが、
いずれにしても十分な甘みを感じることができます。
面白いことに、甘柿で同じように干し柿を作っても
渋柿にように甘くはならないそうです。
柿の種類は約1,000種類もありますが、そのほとんどは渋柿です。
甘柿は、突然変異で生まれたのではないかと考えられています。
渋柿の渋みを抜く方法は、天日に干す方法だけではありません。
アルコールを吹きつける方法もあります。
焼酎の樽に漬けた「樽柿」は、昔から伝わる渋抜きの方法です。
干し柿ほど水分が抜けることなく、独特の食感があります。
現在はエチレンガスやドライアイスを使う方法もあります。
電子レンジで加熱するという方法もあるそうです。
干し柿は保存食品でもあり、昔はかなり乾燥させたようです。
歯が立たないほど固い干し柿もありました。
半生状態の柔らかい干し柿が現れたのは大正時代です。
その秘訣は硫黄燻蒸にあります。
硫黄燻蒸とは、硫黄を燃焼させて発生した亜硫酸ガスで
干し柿をいぶすという方法です。
鮮やかな柿の色を保ち、カビの発生を防ぐことができます。
防腐効果があり、水分が高くても長期保存が可能です。
亜硫酸ガスは、干し柿以外にもさまざまな食品に使われています。
じつは有害な物質なのですが、燻蒸してから柿を干している間に
完全に揮発するので健康に害はありません。
この硫黄燻蒸は、アメリカの干しブドウの製法に学んだそうです。
研究を重ねて干し柿にも応用できるようにしました。
おかげで美味しい干し柿を食べることができます。
先人の知恵に感謝しなければなりません。