おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

石焼き芋はなぜ石で焼くのか

サツマイモの調理方法はさまざまです。

子どもの頃はよく蒸かし芋を作ってもらいました。

 

湯気が立つほかほかの蒸かし芋ももちろん美味しいのですが、

最も理想的なサツマイモの調理方法は、何と言っても石焼き芋です。

 

加熱した砂利石の中に埋めて、じっくり焼き上げる製法です。

 

高温の石が放つ遠赤外線によって、表面はこんがりと香ばしく、

中はほくほくに美味しく仕上がります。

 

長時間かけて焼き上げると、デンプン質がゆっくり糖分に変わります。

そのため石焼き芋は甘くなるのです。

 

直火で焼いたのではそうはいきません。石で焼いてこそ焼き芋です。

 

また、石焼きの石を選ぶのも重要です。

石ならば何でもよいというわけではありません。

 

石焼き芋屋さんの釜の中を覗くと、よく黒い玉砂利が使われています。

天然黒玉石というそうです。

 

小粒の石ですから、表面積が大きくムラなく焼き上がります。

埋めておくだけで美味しくなるまるで魔法のように石です。

 

ところで、石焼き芋に適しているサツマイモは何でしょうか。

 

「紅あずま」と「鳴門金時」は、昔から石焼き芋の定番です。

どちらも、ほくほく系の代表的な品種です。

 

東日本で「紅あずま」、西日本で「鳴門金時」が多いそうです。

 

最近は、しっとり系の「紅はるか」や「シルクスイート」、

ねっとり系の「安納芋」も人気です。

 

ちょっと変わったところでは、紫芋石焼き芋があります。

「パープルスイートロード」という品種が使われています。

 

紫芋は、どちらかというと甘さ控えめの品種が多いのですが、

石焼き芋にすると糖度が増し、しかも色鮮やかになります。

 

まるでおしゃれなスイーツを食べている感じがします。

全然イモっぽくない芋です。