カツオの刺身は皮を引いて作ることが多いのですが、
江戸時代のカツオの刺身は皮つきでした。
美しい縞模様が銀色に輝くカツオの刺身は、
その名も「銀皮造り」といいます。
ただし、皮がついていると食べにくいので、浅く包丁目を入れます。
食べやすくなるだけでなく、醤油が滲みやすくなります。
カツオに限らず、魚の身と皮の間には旨みがあります。
魚の皮を美味しく活かす料理法は昔からありました。
皮目にさっと熱湯をかけて冷水に晒すことを「霜降り」といいます。
加熱することで、皮も美味しくいただけます。
とくに、鯛を霜降りにした刺身のことを「松皮造り」といいます。
松の樹皮に似ているからです。
直火で皮目を炙る方法もあり、通称「火取る」といいます。
火取った魚のお造りが「焼き霜造り」です。
カツオのたたきもこの料理法によって作られます。
とくにワラで焼いたものが最高に美味しいといわれます。
それはなぜでしょうか。
通常の焼き魚には炭火が適しています。
炭火は遠赤外線を出すからです。
魚の内部まで火が通り、ふっくら焼き上がります。
しかしカツオのたたきは、中まで火を通さない料理です。
表面の皮目だけを焼きたいのです。
ですから、炭火は向きません。
その点、ワラを焼くと強い火力が得られます。
しかも木材と違って独特の煙が立ちません。
カツオの皮目を強火で一気に焼くことで香ばしくなります。
ワラで焼くとひと味違うといわれます。
しかし、ワラはそう簡単に入手できません。
仮に入手できても一般の家庭では焼けません。
やはり、本当に美味しいカツオのたたきを食べるためには、
専門の料理店に行くしかありません。
できれば、一本釣りの新鮮なカツオが望ましいです。
高知県には、そのようなお店がたくさんありそうです。