沢庵漬けは干したダイコンを糠と塩に数か月間漬けたものです。
日本の伝統的な漬け物の一つです。
この沢庵漬けを最初に作ったのは誰でしょうか。
一説によると沢庵和尚が考案したと伝えられています。
だから沢庵漬けと名がついたと。
本当にそうでしょうか。
沢庵和尚は戦国時代から江戸時代にかけて活躍した臨済宗のお坊さんです。
名利を求めず気骨のある生き方をした僧侶として知られています。
時の権力者にも筋を曲げることなくいうべきことをいいました。
しかしその魅力的な人柄に惹かれて多くの大名が帰依しています。
三代将軍徳川家光公とも親交がありました。
家光公が沢庵和尚の寺を訪れたときにダイコンの漬け物を召し上がったそうです。
その漬け物を家光公はいたく気に入り名を尋ねました。
「これは名もなき漬け物にござります」と沢庵和尚が答えると
「では沢庵漬けと名づけるべし」と命名されました。
家光公の一声によりそれ以降は沢庵漬けと呼ばれるようになったそうです。
ですから沢庵和尚が沢庵漬けを考案したわけではないようです。
そもそも干したダイコンを糠と塩に漬けるだけの簡単な漬け方を
それ以前の人々が思いつかないわけはありません。
あまりにも一般的に普及している漬け物であるがゆえに
名を問われた沢庵和尚も答えに窮したのではないでしょうか。
禅宗の食事にお粥と漬け物は欠かせません。
お粥を食べ終わった椀にお湯を注ぎ一切れの沢庵漬けで
きれいに椀を拭き取るようにして食べます。
音を立てて沢庵漬けを食べることは禁じられています。
禅宗では厳粛に食事の作法を守ることも大切な修行の一つです。
実際にやってみるとこれは意外と難しいものです。
どうしてもポリポリと音を立ててしまいます。
ゆっくり時間をかけて口の中で静かに噛むしかありません。
ダイコンを栽培した人に感謝し、沢庵漬けを作った人に感謝し、
そしてダイコンの命をいただくありがたさに感謝して味わいます。
それが禅宗の教えなのかもしれません。