ミルク粥にチーズを乗せてオーブンで焼いた料理があります。
ドリアといいます。
もっと正確にいえばライスグラタンという料理です。
マカロニグラタンのマカロニの代わりにご飯を使ったグラタンと
いえばわかりやすいでしょうか。
ドリアという名称から察すると西洋料理のように思われますが、
じつは日本で生まれた料理です。
昭和初期に横浜の老舗のホテルで生まれました。
ヨーロッパから招聘された料理長が発案したと伝えられています。
バターで炒めたご飯に海老のクリーム煮を混ぜベシャメルソースと
チーズをかけてオーブンで焼いた料理でした。
ドリアという料理名はフランス語を語源とするらしいのですが、
一般にそのような名前のフランス料理を私は知りません。
私の勉強不足かもしれませんが少なくとも私の持っているフランス語の
辞書にはドリアという料理名は載っていません。
そもそもドリアという音韻がフランス語らしくありません。
別の説ではイタリアの海軍総督だったアンドレア・ドリアの名に因む
ともいわれていますが、はっきりしたことはわかっていません。
いずれにしても日本でドリアが誕生したきっかけは思いやりの心です。
長旅で体調を崩して食欲のないホテル客のために料理長が作りました。
その発想はお粥を源流とするのではないかと私は考えます。
ヨーロッパからやってきたこの料理長は日本のお粥を食べていたはずです。
心と体に優しく沁みるお粥の神髄を知っていたにちがいありません。
その神髄を西洋料理に活かして創作したのがドリアではないでしょうか。
ですから私はドリアがミルク粥の延長線にある料理と考えています。