マドレーヌは焼き菓子の名前です。
小麦粉、バター、卵、砂糖を使って作ります。
貝殻の形に焼き上げるのが特徴です。
マドレーヌという名称は最初にこの菓子を作った女性の名前です。
その発祥には諸説があります。
最も有力なのはフランスのロレーヌ地方で作られたという説です。
当時ロレーヌ地方を治めていたのはポーランドのスタニスラス国王です。
今でもナンシーという都市には王の名を冠したスタニスラス広場があり、
18世紀の美しい街並がそのまま保存されています。
しかしスタニスラス王はどうも国王という地位には向いていなかったようです。
隣国の利害関係に振り回されて仕方なく王位に就いたといわれています。
カリスマ性もなければ絶大な支配力もなかったようです。
なんとか暗殺を免れたものの最後は王位を奪われてしまいます。
晩年は娘婿のルイ15世の城に引き取られてひっそり暮らしました。
そのスタニスラス王が宮廷で晩餐会を開いたときのことです。
急にパティシエが喧嘩をして出て行ってしまいました。
お客様に出すお菓子がなければスタニスラス王の面目が丸つぶれです。
その窮地を救ったのが召使のマドレーヌでした。
厨房にあった材料を使って何とかお菓子の生地を作りました。
焼き菓子の型がなかったのでホタテの貝殻で代用しました。
黄金色に焼き上げたお菓子をお客に振る舞ったところ大盛況だったそうです。
お菓子の名を尋ねるお客に対して王は「マドレーヌ」と答えました。
それがマドレーヌの始まりです。
史実としては出来過ぎかもしれませんが私はこの話が大好きです。
なぜならばマドレーヌという女性の優しさを感じるからです。
喧嘩して出て行くパティシエを止められなかった王もたしかに情けないのですが、
困っている王を助けたいと思うマドレーヌの気持ちは立派だと思います。
即座においしいお菓子を焼き上げるマドレーヌの腕前は見事です。
しかしそれ以上にマドレーヌの勇気と機転と優しさを感じる話です。
今日マドレーヌが世界中で愛されている理由はおいしさだけありません。
おいしさと一緒に優しさを感じることができるからです。