
屠殺(とさつ)という言葉があまり使われなくなりました。
その意味を知らない子どもたちも増えています。
子どもたちばかりではありません。大人でさえ屠殺の意味を
知らない人がいます。
屠殺とは、食用のために家畜などの動物を殺すことです。
現在では「食肉処理」という表現の方が一般的です。
もちろん表現を変えても、殺すことに変わりありません。
私たちは他の動物の命をいただいて生きているのです。
しかし、スーパーの精肉売り場に並んだ商品を見ると、
そのことを忘れてしまいそうです。
きれいにパックされた精肉からは、屠殺の残酷さが
伝わってきません。
肉が精肉店にやって来るのは、屠殺場からではなく、
あくまで食肉処理工場からなのです。
それでも近年は、家畜の命を奪うことを忌避する風潮が、
次第に強まってきています。
ベジタリアンやビーガンが増えたことや、ソイミートが
普及した理由の一つにも、そうした背景があります。
単なる動物愛護にとどまらず、動物の命も人間の命に
等しいという考え方が見られるようになっています。
それに呼応するかのように新しい肉が生まれました。
それが培養肉です。
その名の通り、動物の細胞を培養して作った肉です。
動物の命を奪うことなく生産することができます。
何十万年も続けてきた人類の長い食肉文化の歴史で、
初めて登場した画期的な食材です。
動物に由来しないアニマルフリーの食材ですから、
動物福祉や動物愛護の点でも評価されています。
ただ、「食わず嫌い」という表現があるように、
人は新しい食べものに対して保守的です。
一度も食べたことがない食品に違和感を持つことも
嫌悪感を持つことも珍しいことではありません。
培養肉が開発され始めた当初は、否定的な意見も
少なくありませんでした、
人工的に作られた肉を食べてみたいという人は
少数派に過ぎませんでした。
ところが、近年の培養肉に関する意識調査では、
消費者の意見が大きく変わってきています。
動物を屠殺した従来の肉よりも好感度は高く、
肯定的な意見が急速に増えています。
近い将来、培養肉を使ったレシピやメニューが
一般的になるかもしれません。
食生活が豊かになることは好ましいことです。
培養肉への期待はますます高まっています。