
以前、ある大学入試の小論文で面白い出題がありました。
リンゴの皮のむき方を説明せよという問題です。
しかも、リンゴの皮のむき方を全く知らない子どもにも
ちゃんと理解できるように説明しなければなりません。
大学入試の問題としてはずいぶん変わっていますが、
受験生に一体何を求めているのでしょうか。
おそらく物事を論理的にわかりやすく説明する能力を
求めているのではないでしょうか。
実際に相手の目の前でリンゴの皮をむいて見せれば、
たいへんよくわかります。
しかし、文章だけでそれを相手に正しく伝えるのは、
なかなか難しいことです。
とくに、今までリンゴの皮をむいたことがない人には、
うまく伝えることができません。
相手の理解度に配慮し、順序立てて説明するために、
高いプレゼンテーション能力が求められます。
ところで、リンゴの皮のむき方は二通りあります。
先に切るか、先にむくかです。
先に切る場合は、リンゴを縦に四等分または八等分して
芯を取り除いてから皮をむきます。
小さい子どもが喜ぶウサギのリンゴは、この過程を
アレンジでして作ります。
先にむく場合は、リンゴをくるくる回しながら
周囲の皮を少しずつむいていきます。
むき終わったら、リンゴを縦に八等分に切り分け、
芯を取り除きます。
最近はアップル・ピーラーという便利な道具もあり、
ナイフを使わなくても簡単にむくことができます。
あるいは、初めから皮をむいてカットした状態で
売られているリンゴもあります。
そのせいか、近年はナイフを使ってリンゴの皮を
むいた経験がない人も増えています。
ナイフレスの習慣は着実に私たちの食生活の中に
広がりつつあります。
しかしその一方で、リンゴの皮むきの技術を競い合う
コンテストも各地で開かれています。
ある一定時間内に、リンゴの皮を途切れることなく、
できるだけ長くむいていくコンテストです。
手先の器用さだけでなく、かなりの集中力と忍耐力が
要求されます。
敢えてそうした能力を児童に身につけてもらうために、
年中行事に取り入れている小学校もあります。
六年間練習を続けているとかなり上達するようです。
長さ十数メートルに達する記録もあるそうです。
そうなると、もはやリンゴの皮には思えません。
まるで一本の長いそうめんのように見えます。
技術というよりは、むしろ芸術と呼んだ方が
ふさわしいかもしれません。