おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしいことばを探してみましょう。

パスタがイタリアで愛される理由

 

リュック・ベッソン監督の映画「グラン・ブルー」に、

名優ジャン・レノがエンゾーの役で登場します。

 

エンゾーは、シチリア出身の素潜りの天才ですが、

自信過剰でじつに尊大な性格をしています。

 

しかし、その一方で家族と友だちを心から愛する

陽気なイタリア人としても描かれています。

 

その気質をジャン・レノが見事に演じています。

まさに名演技という他ありません。

 

あるとき、エンゾーは海辺のリストランテ

海の幸のパスタを食べていました。

 

素潜りの競争相手であり、幼馴染みでもある

ジャックも一緒です。

 

すると、そこにエンゾーのママンが急に現れて、

エンゾーは慌ててしまいます。

 

ママンが作ったパスタ以外食べてはいけないことに

なっているからです。

 

エンゾーは「これを食べる振りをしてくれ」と、

自分のパスタの皿をジャックに渡します。

 

ママンが「食べたわね」とエンゾーをにらむと、

「いや、食べてない」とエンゾーが答えます。

 

何とかママンの追及をかわすエンゾーですが、

微笑ましいやり取りが印象的な場面です。

 

エンゾーは素潜りにかけて天下無敵の強者ですが、

何歳になってもママンには逆らえません。

 

もちろんすべてのイタリア人が、そうした規則に

縛られているわけではありません。

 

しかしイタリアのママンの多くは、それが当たり前

のことだと思っているかもしれません。

 

美味しいパスタ料理を家族に食べさせることが、

自分の義務であると固く信じているからです。

 

子どもが小さい頃からこう教えているのでしょう。

「ママンが作ったパスタ以外食べちゃだめよ。」

 

そのためイタリア人の多くは、ママンが作った

パスタ料理が世界一美味しいと思っています。

 

たとえ最高級のリストランテで供されるパスタが

美味しくても、ママンのパスタには敵いません。

 

日本人にも忘れられない「おふくろの味」があり、

その気持ちはたいへんよくわかります。

 

パスタがイタリアで愛されている理由の一つは、

それが「ママンの味」だからです。