
1872年にフィリピン沖で沈没したマリーテレーズ号から
ワインが見つかったのは1991年のことです。
100年以上も海底に眠っていた約2.000本のワインは、
いずれも高級なヴィンテージでした。
ワインの品質は全く劣化することなく、むしろ熟成された
深い味わいがあることがわかりました。
引き上げられたワインはさっそくオークションにかけられ、
日本円にして1本数十万円の価格で落札されたそうです。
また、1916年にはスウェーデン沖でジョンコピンク号が
ドイツ軍の攻撃を受けて沈没しました。
船内に残っていた約3,000本のシャンパンが、1998年に
引き上げられましたが、これも素晴らしい品質でした。
水深64メートルの海底に沈んでいたので、かなり高い水圧が
かかっていましたが、却ってそれが幸運でした。
ワインと違ってシャンパンはボトル内部が高圧になっています。
水圧が高い方が保存に適していたと考えられます。
80年の時を経た沈没船のシャンパンはオークションにかけられ、
これまた1本数十万円で落札されました。
ワインは、通常「カーヴ」と呼ばれる地下の貯蔵庫に
静かに保存されます。
年間を通して、カーヴ内の温度と湿度が一定に保たれ、
光と振動が少ない環境はワインにとって理想的です。
まさに海底はその条件を満たしていると言えますが、
もちろん深ければよいというわけではありません。
タイタニック号のように3,000メートルを超える深海では
ワインのボトルは粉々になってしまいます。
沈没船は世界の海のいたるところで確認されていますが、
ワインが見つかるのは極わずかです。
仮にワインが見つかったとしても、飲める状態なのか、
引き上げるだけの価値があるのかわかりません。
そこで、敢えてワインを海底に沈めて熟成させるという
面白い計画があるそうです。
数十年後に引き上げて、どのような味になっているのか
飲んでみる壮大な試みです。
場合によっては、品質が劣化して飲めなくなるリスクも
ありますが、遊び心をくすぐるわくわく感があります。
何だか、小学生が卒業するときに作るタイムマシンに
よく似ています。
10年後の自分に手紙を書いて箱に詰め、校庭の隅に
埋めるあのタイムマシンです。
10年後にタイムマシンを掘り出して開けてみると、
小学生の頃の自分から手紙が届きます。
海底に沈めるワインにもそれに似た夢があります。
こうした企画は誰にとっても楽しいものです。