おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしいことばを探してみましょう。

なぜ酢豚にパイナップルを入れるようになったのか

 

酢豚という料理名は日本で命名されました。

中国では通じません。

 

酢豚の原型となった料理は、広東省発祥の

「古老肉(グーラオロウ)」です。

 

角切りの豚バラ肉をいったん油で揚げてから、

野菜やパイナップルと一緒に炒めます。

 

醤油、老酒、トマトケチャップなどで味を調えて、

仕上げに甘酢あんをからめます。

 

古老肉の料理方法は、日本の酢豚とほぼ同じですが、

日本に紹介されたときに料理名を変えました。

 

その理由は、漢字が読みにくいこともありますが、

印象がよくなかったからではないでしょうか。

 

古老肉という料理名では、年老いた豚の古い肉を

使うと誤解されてしまいます。

 

そのため酢豚という料理名が採用されましたが、

誰が最初に名づけたのかわかっていません。

 

もう一つ、古老肉が日本に紹介されたときに

変更された点があります。

 

それは、パイナップルを使わずに料理するように

なったことです。

 

日本に伝わった中国料理の多くは、日本人の味覚に

合うように料理が改良されています。

 

酢豚もその一つであり、日本人は果実が入った料理を

あまり好みませんでした。

 

現在でもパイナップルを入れない酢豚が主流ですが、

入れた方が美味しいという人も少なくありません。

 

酢豚にパイナップルを入れるか入れないかは、

今も論争が続いています。

 

ところで、酢豚の原型となった古老肉は、

いつの時代に生まれたのでしょうか。

 

米原産のパイナップルが中国に伝わったのは、

17世紀と考えらえています。

 

また、トマトケチャップが中国に伝わったのは、

19世紀と考えられています。

 

ですから、古老肉が生まれたのはそれ以降であり、

清の時代の後期に生まれたと伝えられています。

 

当初から古老肉にはパイナップルを使っていましたが、

じつは、それには理由があります。

 

欧米人が多く居住していた香港や上海の料理店で、

高級感を演出するために考案されたからです。

 

西洋料理では、ポークソテーにパイナップルを

つけ合わせることがあります。

 

甘酸っぱいパイナップルは豚肉料理に合うので、

それを参考にしたのかもしれません。

 

パイナップルには、「ブロメライン」と呼ばれる

タンパク質分解酵素が含まれています。

 

酵素には肉を柔らかくするはたらきがあるので、

たしかに料理方法としては理に適っています。

 

しかし、パイナップルが酢豚に合うかどうかは、

意見が分かれるところです。