
タコを食べる国は世界でも限られていますが、
中でも日本は有数のタコ好きの国です。
国内のタコの産地といえば、明石が有名です。
海峡の潮流に揉まれて身が締まっています。
アフリカのタコが国内に流通しています。
欧米では「デビルフィッシュ」として嫌われ、
一般にタコを食べないと言われてきました。
しかし、実際にはイタリアやスペインなど、
地中海沿岸の国では食べられています。
世界的な日本食ブームの広がりもあって、
タコの需要は急速に伸びています。
そこで、タコの養殖が試みられていますが、
そう簡単には実現しません。
その理由はいくつか考えられますが、
最大の理由は、タコの習性です。
タコは群れを作らず、単独で行動します。
近くに他のタコがいることを嫌います。
そのため、狭い水槽で集約的に飼育すると、
互いに攻撃し合うこともあります。
また、タコはたいへんな大食いです。
しかも生きたエサを食べます。
つねに大量の魚介類を与え続けなければ、
タコ同士で共食いを始めます。
手間とコストがかかる割に成功例が少なく、
これまで養殖の商業化は進んでいません。
初めてタコの完全養殖が実現したのは、
2004年のことです。
その後、日本の企業でも完全養殖に成功し、
いよいよ本格化するかと思われました。
ところが意外な理由によって、タコの養殖が
できなくなる恐れが出てきました。
タコの養殖が動物虐待に当たるという主張が、
一部の生物科学者から出ているためです。
それによると、タコはたいへん知性が高く、
豊かな感性を持つ動物だそうです。
人間と同じように、痛みや苦しみやストレスを
感じる能力があるともいわれています。
そのタコを過酷な環境下で飼育することは、
動物虐待に当たると主張されています。
タコの養殖を禁止する法律が可決しました。
他の地域で養殖されたタコを輸入することも
法律で禁止しています。
今後、そうした法律が各地に広がっていけば、
タコの養殖ができなくなるかもしれません。
タコの養殖は、技術的に実現可能であっても、
法的に許されなくなる恐れがあるのです。