おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしいことばを探してみましょう。

マスクをしていないマスクメロン

 

桂文枝師匠は創作落語を得意としていらっしゃいます。

桂三枝を名乗っていた頃から名作を残しています。

 

時代の流行に敏感なネタ作りには定評があります。

マスクメロンのネタもその一つです。

 

こんな小噺です。

 

近頃は風邪がようはやっておりまんなあ。

道ゆく人みんなマスクしてはります。

 

この間フルーツショップの前を通りかかりましたら、

店先のメロンまでマスクしとりました。

 

よう見たらマスクメロンですねん。

 

もちろんマスクメロンはマスクをしていません。

では、なぜマスクメロンというのでしょうか。

 

じつはマスクメロンのマスクは覆面ではありません。

ムスク、つまり麝香(じゃこう)のことです。

 

 

麝香とはジャコウジカの体から取れる香料の一種です。

たいへん香りがよく、昔からお香に使われています。

 

まるでムスクのような気品あふれる芳香があるので、

ムスクメロンと名づけまれました。

 

それがやがてマスクメロンになりました。

 

ただし、マスクメロンは品種名ではありません。

品種としては「アールスフェボリット」といいます。

 

「伯爵のお気に入り」という意味です。

短く「アールスメロン」とも呼ばれます。

 

イギリスで生まれて日本に伝わって以来、

日本でさまざまな品種が生まれました。

 

今では本家イギリスも凌ぐ高い品質を誇り、

高級メロンの代表になっています。

 

ところで、マスクメロンの表面の網目模様は、

なぜできるのでしょうか。

 

実が生り始めた時期にはまだ網目模様がなく、

表面はつるりとしています。

 

ところが、外皮の成長よりも果肉の成長が早いので、

次第に表面にひび割れが生じます。

 

それが固くなってきれいな網目模様ができます。

目が細かく均質なものがよいとされています。

 

メロンにはさまざまな種類があるので、

網目模様がないメロンもあります。

 

しかし網目模様がないメロンを見ると、

何となくマスクを外した素顔に見えます。

 

気のせいでしょうか。