世界にはさまざまな食文化がありますが、
いずれも長い年月をかけて形成されています。
いったん確立された食文化は保守的な傾向があり、
異質のものに対して排他的になります。
たとえば、日本の茶の文化は鎌倉時代に始まります。
現在、日本の国内で栽培されている茶の多くは、
栄西が持ち帰った茶の子孫です。
栄西は、茶の栽培法や製法だけでなく、
茶の飲み方も広めました。
そのおかげで、数百年の間に茶は日本に普及し、
一つの食文化を形成しました。
そのため固定観念に捉われ過ぎることもあります。
今までにない飲み方をあまり受け入れません。
その点、日本茶に慣れていない外国人は柔軟です。
砂糖やミルクを入れて飲むことさえあります。
日本人からすると、ちょっと違和感がありますが、
慣れていないからこそ生まれる発想です。
同じことがアイスコーヒーについても言えます。
アイスコーヒーはじつは日本で生まれました。
長いコーヒー文化の歴史を持っている国々では、
一般にアイスコーヒーが見られません。
おそらくアイスコーヒーの発想はあっても、
定着しなかったと考えられます。
コーヒーは熱いものという固定観念があるせいかも
しれませんが、理由はそれだけではありません。
冷めてしまったコーヒーは、香りが失われていることを
体験的によく知っているのです。
では、なぜ日本のアイスコーヒーは美味しいのでしょうか。
それは日本独自の製法で作られるからです。
濃く淹れた熱いコーヒーを、氷を入れたグラスに注ぎます。
急冷することで味と香りを閉じ込めることができます。
冷めてしまったコーヒーではなく、初めから冷たくして
美味しく飲むことを考えたコーヒーなのです。
今では、日本のアイスコーヒーは世界に広まっています。
保守的なコーヒー文化の国でも受け入れられています。
美味しいものを愛する食文化は万国共通です。
新たなアイスコーヒー文化が生まれつつあります。