雄鶏の尻尾の12の物語 ( The Twelve Tales of The Cocktails ) は、私が考案した次の12種類のオリジナルカクテルを紹介している。
- ウィンブルドン ( Wimbledon )
- インザパープルレイン ( In The Purple Rain )
- ビッグイージー ( Big Easy )
- デタント ( Détente )
- スリジャヤワルダナプラコッテ ( Sri Jayawardenepura Kotte )
- イタリアンスタリオン ( Italian Stallion )
- ファンブル ( Fumble )
- アンダーグラウンド ( Underground )
- フロンティアスピリット ( Frontier Spirit )
- ブラウンシュガー ( Brown Sugar )
- スティング ( Sting )
- ノクターン ( Nocturne )
カクテルの由来
世の中には誤解や勘違いによって名前がつけられ、そのまま広く定着してしまったものがいくつかある。
例えばカンガルー。
オーストラリアで初めてカンガルーを見たヨーロッパ人が、「あれは何か」と現地の住民に尋ねたところ「カンガルー」と答えたという。それは彼らの言葉で「わからない」を意味するのであったが、ヨーロッパ人はそれが動物の名前だと思い込み、以来そう呼ばれるようになったという。
もう一つ。
東海道五十三次の保土ヶ谷には急勾配の坂道があり、難所として知られていた。あるときこの坂道で一休みした大名が、家臣に命じて地元の農夫に坂の名を尋ねさせたところ、訊かれた農夫が耳の遠い老人であったため、自分の名を問われたものと勘違いして「権太でござります」と答えたという。その後、この坂道は権太坂と呼ばれるようになった。
さて、カクテルの名の由来は何か。
真偽は不明だが、語源については諸説がある。中でも有力なのが「雄鶏の尻尾」説である。こんな話である。
メキシコのある港に停泊したイギリス船の水夫たちが港町の居酒屋に立ち寄ると、現地ではラムに砂糖やら果実やら様々な素材を混ぜて飲むのが流行していた。
イギリス人の水夫が「それは何だ」と尋ねると、メキシコ人のバーテンダーは、酒をかき混ぜるスティックのことを訊かれたと勘違いして「雄鶏の尻尾だ」と答えた。もちろんスペイン語で。その木製のスティックが雄鶏の尻尾の形に似ているのでそういう名がついていたのである。
それからというもの、イギリス人の水夫たちの間では酒に何かを混ぜた飲み物のことを雄鶏の尻尾 ( Cocktail ) と呼ぶようになった。もちろん英語で。
こうしてカクテルが誕生したといわれている。
カクテルの魅力は無限である。料理やスイーツがそうであるように、カクテルは人々を幸福にする大切な食文化の一つであると私は考えている。しかし、何しろ酒の話であるから、20歳未満の方の購読は何卒ご遠慮いただきたくお願いしたい。