「100年先に伝えたい日本の美味しいお餅と和菓子2」は、次の9品を紹介しています。
「柚餅子」
「カステラ」
「ところてん」
「水無月」
「月見団子」
「どら焼き」
「宇治金時」
「饅頭」
「金平糖」
日本料理の優れている点は、季節感を大切にすることと、素材の持ち味を最大限に活かすことです。それは和菓子でも同じです。春には、桜の花を模した菓子や桜の葉の塩漬けを使った菓子があり、夏には、葛や寒天を使った清涼感あふれる透き通った菓子があり、秋には、紅葉を彩った菓子や、秋の代表的な味覚である栗や薩摩芋を材料にした菓子があり、冬には、身も心も温まる蒸し菓子や焼き菓子があります。
四季折々の和菓子の中には、日本人の繊細な感性が美しく反映されてきました。とくにそれが顕著に表されているのが、「練り切り」という和菓子です。艶やかで品よく美しく、まさに和菓子の華と呼ぶのに相応しい菓子です。
練り切りの生地は、白餡に求肥(ぎゅうひ)を混ぜて作ります。まず、白餡を加熱して十分に水分を飛ばします。これを「火取り」といいます。求肥は、白玉粉を水に溶いて練り、上白糖を混ぜながら加熱します。白餡と求肥を均一に混ぜ合わせ、滑らかになるように水飴を加えて練ります。耳たぶの柔らかさに仕上げるのがコツです。
生地を成形して、花や果実や手毬や蝶の形を作り、彩りよく色をつけます。「梅に鶯」「若鮎と清流」「名月と薄」「雪中の白兎」など、季節に合わせて多彩な練り切りを楽しむことができます。
和菓子のもう一つの大きな特徴は、何といっても小豆餡です。和菓子の美味しさは、小豆餡の美味しさによって決まるといっても過言ではありません。小豆は水で洗い、たっぷりの水に一晩漬けておきます。鍋に小豆と水を入れて火にかけ、アクを取りながら弱火で煮ます。途中で差し水をしながら煮詰め、小豆を指先で簡単につぶせる程度になったら、火を止めて上白糖を加えます。
煮上がる前に砂糖を入れると小豆が硬くなってしまうので、必ず火を止めてから加えます。また、このとき塩を一つまみ入れると甘みが際立ちます。ちなみに、和菓子は洋菓子に比べると一般的に低カロリーといわれていますが、それは、単にバターや生クリームなどの高カロリーの乳製品を使わないということだけが理由ではありません。塩を加えて甘みを強く感じさせる料理技術があるため、砂糖を大量に使わなくても済むことも理由の一つです。
煮上がった小豆は、そのまま鍋ごと冷ました後、再び火にかけて練り上げます。水飴を加えるとつやつやとした餡に仕上がります。粒が残った状態のものを「粒餡」、すりつぶして濾したものを「こし餡」といいます。粒餡には小豆らしい食べ応えがあり、こし餡には上品な滑らかさがあります。
小豆餡は、団子や白玉にも合いますが、餅にもたいへんよく合います。牡丹餅、あんころ餅、善哉、お汁粉など、餅と小豆餡を組み合わせた料理は数知れません。いずれも、日本人の舌とお腹を満たしてくれる美味しい料理です。餅菓子と和菓子は、日本の至宝ともいうべき菓子です。