おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしいことばを探してみましょう。

100年先に伝えたい日本の美味しい御節料理

「100年先に伝えたい日本の美味しい御節料理」は、次の10品を紹介しています。

 

「黒豆」

「伊達巻き」

「田作り」

紅白なます

「鰤の照り焼き」

「昆布巻き」

松前漬け」

「いかにんじん」

「ひたし豆」

「三日とろろ」

 

 なお「三日とろろ」は御節料理ではありませんが、正月三日に食べる郷土料理であることから一緒に収録しました。

 

 御節料理の起源はたいへん古く、奈良時代の節会(せちえ)に始まります。節会とは、季節の節目となる祝日に朝廷で催された公的な行事のことです。宮廷に臣下が集い、饗宴が開かれました。そのとき供された祝儀料理を御節供(おせちく)といいますが、これが御節料理の原型であると考えられます。ただし、現在のように重箱に詰めた料理ではありませんでした。

 江戸時代になると、節会の中でも節句(せっく)が重視されました。とくに、人日の節句(一月七日)、上巳の節句(三月三日)、端午の節句(五月五日)、七夕の節句(七月七日)、重陽節句(九月九日)を五節句と呼び、幕府の正式な祝日に定めました。元日(一月一日)は、特別な日ですから五節句には含まれませんが、御節供を供えて新年を迎える祝賀の宴を開きました。

 正月料理のうち、お膳に盛ったものを御節(おせち)と呼び、重箱に詰めたものを食積(くいつみ)と呼んで区別していましたが、やがてこれが融合して、重箱に詰めた正月料理を一般に御節料理と呼ぶようになりました。

 重箱には、めでたさを重ねるという縁起のよい意味があります。通常は四段重ねにすることが多いのですが、四という言葉を避けて、四段目を「与の重」と呼んでいます。ただし、三段重ねもあれば五段重ねもあり、重箱を何段にするかによって料理の詰め方も変わってきます。

 四段重ねの場合、「一の重」には、祝い肴三種と口取りを詰めます。祝い肴三種は関東と関西で異なり、関東では黒豆、数の子、田作りが入り、関西では黒豆、数の子、たたきごぼうが入ります。口取りは紅白蒲鉾、伊達巻き、栗金団、金柑の甘露煮などです。「二の重」には、焼き海老、鰤の照り焼き、鮑の酒蒸しを詰め、「三の重」には昆布巻き、菊花蕪、牛肉の八幡巻き、烏賊の松笠煮を詰めます。

 そして「与の重」には、煮しめを詰めます。煮しめの品数は奇数にするのが決まりですが、七福神にあやかって七品にすることが多く、里芋、慈姑、人参、椎茸、牛蒡、蓮根、蒟蒻などが使われます。

 御節料理を美しく重箱に詰めるために、古来伝承されてきた仕切り方があります。たとえば段取りは、横に奇数段を仕切り、升掛けは、斜めに気数列を仕切ります。隈取りは、重箱の四隅を仕切って五品を詰めます。市松は、九つの正方形に区切って九品を詰めます。末広は、中央に小鉢や柚子釜を置いて周囲に四品を詰めます。周囲に六品を詰めると七宝になります。

 原則として三が日の間は、餅を焼いて雑煮を作る以外に火を使いません。そのため、重箱に詰めた御節料理は、日持ちするように、火を通すか、または酢で締めて料理されています。ですから、手をつけずに飾っておくこともできます。実際、豪華に重箱に詰められた御節料理に手をつけるのは、何だかもったいない感じがします。

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