「100年先に伝えたい日本の美味しい青魚」は、次の13品を紹介しています。
「しめ鯖」
「秋刀魚の塩焼き」
「船場汁」
「鯖の味噌煮」
「鰤の照り焼き」
「鰹のたたき」
「鰤大根」
「鰯の万年煮」
「さんが焼き」
「なめろう」
「バッテラ」
「鯵のたたき」
「鰯のつみれ」
魚をさばくことができない人は珍しくありませんが、昨今は生魚を触れないという人も増えています。しかし魚をさばいて料理することは、思ったほど難しいことではありません。むしろとても楽しいことです。
初めのうちは、少し抵抗があるかもしれません。魚を切るのが怖いとか、手に魚の臭いがつくのが嫌だといった声をよく聞きます。それでも、自分で魚をさばくことは貴重な経験です。生きものの命をいただくことを実感できるからです。他ではなかなか得られない経験です。
料理から受ける感動もまた大きいものです。自分でさばいた魚を自分で料理すると、魚の個性をよく知ることができます。この魚はこんなに美味しいのかと教えられます。そうした発見は大きな喜びです。代償として手が魚臭くなることくらい、全く気にならなくなります。
魚をさばくためには、まず包丁が必要です。一般の家庭で使われている包丁、いわゆる三徳包丁(文化包丁)では、刃がこぼれてしまって魚をさばけません。魚には、魚専用の包丁を使わなければなりません。専用の包丁といっても、用途によって様々な形と種類があります。最低限そろえたいのは。出刃包丁と柳葉包丁(刺身包丁)の二本です。さばくだけなら出刃包丁だけでもよいのですが、刺身にするには柳葉包丁がなくてはなりません。引き造り、平造り、薄造り、細造りなどは柳葉でなければできない芸当です。
包丁の他に必要なのは、骨抜きです。その名の通り、小骨を抜くための道具であり、トゲ抜きよりも一回り大きいものです。まな板も、魚料理用と他の料理用を使い分けた方がよいでしょう。ウロコ引きは、差し当たって必要ありません。出刃包丁の背でもウロコを落とすことができます。
家庭で料理しやすいのは、イワシ、アジ、サバ、サンマ、トビウオなどの青魚です。カツオやブリは大きいので、一尾ではなく、切り身や柵取りされたものが便利です。青魚の料理は、料亭のような洒落た料理が少なく、どちらかというとありふれた定番の家庭料理ばかりです。しかし古くから伝わる青魚料理には、伝わるだけの理由があり、必然性があります。青魚はこうして料理するのが美味しいという昔の人の知恵と技と信念が込められています。
ですから、青魚料理を伝承してきた先人に敬意を表し、人の命を育むために食べられてきた青魚に感謝することは大切なことです。それが青魚の美味しさを次世代に伝えていくことにつながると信じるからです。