おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしいことばを探してみましょう。

100年先に伝えたい日本の美味しい麺料理

「100年先に伝えたい日本の美味しい麺料理」は、次の12品を紹介しています。

 

「たぬき蕎麦」

「焼きそば」

「ラーメン」

「きつねうどん」

ほうとう

「にしん蕎麦」

「ちゃんぽん」

冷やし中華

沖縄そば

「鴨南蛮」

讃岐うどん

「冷麦」

 

 小麦の原産地は、コーカサス地方からメソポタミア地方にかけた地域です。紀元前3,000年頃には、ヨーロッパやアフリカでも栽培が始まり、人類にとって主要な食糧となっていきました。初期の小麦は、お粥のように柔らかく煮て食べていたようですが、石臼が発明されて製粉技術が確立すると、小麦粉を水で練った生地を焼いたり煮たりして食べるようになりました。

 そうした小麦粉料理の一つが麺類ですが、いつの時代にどこで麺類が発祥したのか、その起源についてはっきりしたことはわかっていません。中国で発明されたという説もあれば、中東で発明されて、東に伝わったものが中国の麺類になり、西に伝わったものがイタリアのパスタになったという説もあります。

 中国に小麦が伝わったのは、シルクロードによって西方との交易が行われるようになった前漢の時代です。しかしそれ以前から、中国にはアワやキビを原料にした麺類があったという説もあります。また、現在でも中央アジアの国々では「ラグマン」と呼ばれる小麦粉の麺料理が食べられていますが、これが中国に伝わって「ラオ麵」の語源になったのではないかという説もあります。

 いずれにしても、麺類はかなり古い時代から食べられていました。日本には奈良時代以降、遣唐使や留学僧らの手によって種々の麺類が伝えられました。それが国内に普及して「うどん」「そば」「そうめん」「きしめん」「ひやむぎ」「ほうとう」などのさまざまな麺類が誕生しました。伝統的な麺類ばかりでなく、近代以降は中国の麺料理から着想を得て、日本人の味覚に合った「ラーメン」や「ちゃんぽん」などの独自の麺類も生み出されてきました。

 なぜ日本人はこれほど麺類が好きなのでしょうか。その理由は、日本の食事の作法に関係があるのではないかと考えられます。日本では箸を使って食べますが、箸は麺類を食べるのにたいへん適した道具です。実際に、箸食文化圏に属する中国、日本、韓国、ベトナムには多様な麺料理が知られています。

 しかも日本では、食器を手に持って直接食器に口をつけて食べる習慣があります。これは他の箸食文化圏の国には見られない日本独自の作法です。スプーンで少量ずつ口に運ぶのであれば音を立てずに済みますが、直接食器に口をつけてすすると、どうしても大きな音を立ててしまいます。外国では一般に無作法な食べ方と見なされますが、日本では許容されています。やはり麺類は、ずずっと音を立てながらすするように味わうのが美味しい食べ方です。

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