おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしいことばを探してみましょう。

100年先に伝えたい日本の美味しい焼物料理2

「100年先に伝えたい日本の美味しい焼物料理2」は、次の9品を紹介しています。

 

石焼き芋

「さんが焼き」

「茄子の鴫焼き」

「玉子焼き」

「生姜焼き」

「たこ焼き」

「たい焼き」

「焼肉」

「おやき」

 

 焼物料理は、人類が火を使うようになってから生まれた最も原始的で最も単純な料理です。おそらく食材を串に刺して直火で焼いていたと考えられます。そうした焼き方は、今日でも「焼き鳥」や「焼き魚」や「バーベキュー」などに受け継がれています。

 しかし、大きな肉のかたまりを直火で焼いても中までしっかり火が通らないので、中東料理の「ケバブ」のように、焼けた表面を少しずつ削りながら食べていたかもしれません。また、火力が強すぎては食材が黒焦げになってしまうので、バナナやハスのような大きな葉に包んで熾火の中に埋める料理方法、いわゆる「蒸し焼き」のような料理方法も、かなり早い時代からあったのではないでしょうか。

 木材を炭化して作る「木炭」の発明は、人類の料理史上、最も画期的な出来事でした。安定した火力を一定時間保つことができ、焼物の効率が飛躍的に向上しました。炭火は遠赤外線を発するので、食材の中まで火が通り、ふっくらと焼き上がります。「炭火焼」という料理方法自体がすでにご馳走なのです。

 熱輻射を利用した直火焼きではなく、熱伝導を利用して間接的に加熱する方法が「石焼き」です。「石焼き芋」や「石焼ビビンバ」などが知られています。高温に熱した石で食材を焼く料理方法ですが、石は保温性が高いので、石焼にすることによって均一に食材に火が通ります。それに類する料理が「塩釜焼き」です。石の代わりに塩で食材を包み込んで焼く料理です。食材の水分が逃げることなく、適度の塩味がつく理想的な料理方法です。

 古代においては土鍋などの土器の料理器具に使っていましたが、製鉄の技術が確立してくると、鉄板や鉄鍋のような鉄製の料理器具が現れました。それらを使って食材を焼く料理は、やがて煮る料理や炒める料理を融合するようになりました。たとえば「すき焼き」は「焼く」と「煮る」の中間の料理であり、「生姜焼き」は「焼く」と「炒める」の中間のような料理です。

 日本語の焼物料理は、かなり広範囲の意味で使われています。英語でいうところの「ロースト」「グリル」「ベイク」「トースト」の全てを指しています。ときには「フライ」「ボイル」のことさえ指すことがあります。火を使って調理する全般が、すなわち焼物であると解釈できます。

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