「100年先に伝えたい日本の美味しい煮物料理1」は、次の9品を紹介しています。
「おでん」
「肉じゃが」
「雑煮」
「治部煮」
「筑前煮」
「風呂吹き大根」
「鯖の味噌煮」
「煮転がし」
「鰤大根」
「煮物」という料理方法は古くから知られていますが、一概に煮物といっても、じつはさまざまな煮方があります。たとえば、素材に味を滲み込ませるために、たっぷりの煮汁で長時間煮る料理を「煮込み」といいます。「もつ煮込み」や「味噌煮込みうどん」のように、料理名に「煮込み」がつくこともあります。
煮魚を作るときは、「煮つけ」という料理方法を用います。魚がかぶる程度の煮汁で甘辛く煮つけ、少量の煮汁が残るように仕上げます。魚は煮崩れしやすいので、底の浅い平らな鍋を使い、「落とし蓋」をして煮つけます。葱や生姜の香りを活かして風味よく魚を煮つけるのが一般的です。
根菜やコンニャクや昆布などを濃い味で煮て、日持ちさせる料理を「煮しめ」といいます。「お煮しめ」とも呼ばれますが、「鬼締め」に通じることから、邪気を祓う無病息災の縁起物とされ、御節料理の一つにもなっています。美しく重箱に飾るために、素材を個々に煮しめて煮崩れを防ぎます。
薄口の出汁で素材をさっと煮て、冷ましながら味を滲み込ませる料理を「煮浸し」といいます。「煮込み」と違って長時間煮ることなく、軽く火を通してそのまま煮汁に浸すのが特徴です。長く煮過ぎると食感が失われてしまう葉物野菜などを料理するときに用いられる技法です。
煮崩れしにくい素材を煮るときは、煮汁に浸して冷ますのではなく、弱火でじっくり煮て出汁の旨みを素材の中まで含ませます。これを「含め煮」といいます。高野豆腐や飛龍頭や干し椎茸などを煮るときに適した料理方法です。
煮汁がなくなるまで、鍋が焦げつかないように揺り動かしながら煮詰める料理を「煮転がし」といいます。里芋の「煮転がし」がよく知られ、通常「煮転がし」といえば、里芋の料理のことを指します。
冷えてしまった煮物は温め直して食べますが、煮物の多くは冷めているときに味が滲み込むために、再び煮ると一層美味しく感じられます。そのため、敢えて煮物を一晩寝かせてから食べることもあります。また「時雨煮」や「佃煮」は、ほとんど汁気がなくなるまで煮詰めて料理するので、煮物というよりは保存食として扱われ、煮直すことなく常温で食べられます。料理の幅が広いのも煮物料理の大きな特徴です。