「100年先に伝えたい世界が愛するフランス料理1」は、次の11品のフランス料理を紹介しています。
「オムレツ」
「ブイヤベース」
「ポトフ」
「グラタン」
「フォアグラソテー」
「エスカルゴ」
「ラタトゥイユ」
「テルミドール」
「エクレア」
「コンソメスープ」
「ヴィシソワーズ」
フランス料理は、中華料理やトルコ料理と並ぶ「世界三大料理」の一つに数えられています。非常に高い料理技術から生み出される豪華で洗練された奥深い料理です。なぜ、フランス料理はこれほど発展したのでしょうか。それは、フランスの国の成り立ちと深い関係があるようです。
紀元前のフランスは、ローマ帝国の属州の一つとして「ガイア地方」と呼ばれていました。当時のヨーロッパ文明の中心地はローマであり、華やかな文化が栄えていました。贅を尽くした最高の料理技術がすでにローマで確立され、連日連夜、貴族の饗宴が続いていました。フランスの食文化は、少なからずその影響を受けていますから、フランス料理の源流はイタリア料理の源流と重なっています。
やがてフランク王国が成立して、現在のフランスの原型が築かれましたが、国家としての統一意識が高まったのは、百年戦争に勝利してイギリスから領土を奪い返してからです。次第に王権が強まっていく中で、宮廷料理が発達していきました。
宮廷料理は、ただ美味しいだけでは十分ではありません。外交上の饗応接待の役割も担いますから、王の権威を誇示し、食べる相手を感服させなければなりません。そのため王は、腕の立つ料理人を厳選して召し抱え、高価で希少な食材も惜しみなく注ぎ込んで最高の料理を作らせました。料理技術が発達しないわけはありません。
とくに絶対王政を築いたブルボン王朝時代の宮廷料理は、料理の芸術性を極めたといっても過言ではありません。古代ローマの料理技法をはるかに凌いでいます。料理におけるこうした芸術至上主義は「オート・キュイジーヌ」と呼ばれます。フランス語で「至高の料理」という意味です。一切の妥協を許さず、最高水準の料理を追求する姿勢を表しています。そのためフランス料理は、複雑で重厚で時間と手数がかかる料理へと変容していきました。
フランス料理を体系づけて、料理名や料理方法をわかりやすく定義したのは、「フランス近代料理の父」と称されるエスコフィエ氏でした。彼のおかげで、厨房における料理人の役割分担が明確になり、シェフの指揮系統が効率よく伝わって料理の質が向上しました。また、オードブルに始まってデザートに終わるコース料理を考案したのもエスコフィエ氏でした。料理人は一つの料理を集中して作り、お客は一つの料理をじっくり味わうことができるようになりました。
フランス料理にエスコフィエ氏が残した功績はたいへん大きなものですが、一人の偉大なシェフによって一国の食文化が築かれるわけではありません。今日のフランス料理があるのは、美食を心から愛してやまないフランス国民が長年にわたってフランス料理を守り続けてきたからです。
なぜフランス料理がこれほど発展したのか、その理由は明らかです。美味しい料理を楽しむだけでなく、料理の価値を正当に評価し、優れた料理人に対して称賛と敬意を惜しまない風潮がフランスにあるからです。レストランを星の数で評価するのはその典型です。まさにフランス人の国民性を示しているといえます。