おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしいことばを探してみましょう。

100年先に伝えたい日本の美味しい米料理1

「100年先に伝えたい日本の美味しい米料理1」は、次の10品を紹介しています。

 

「赤飯」

「おむすび」

おかゆ

「きりたんぽ」

「お茶漬け」

「卵かけご飯」

深川めし

「栗おこわ」

「牛乳粥」

ちまき

 

 稲作は弥生時代に日本に伝わったというのが従来の定説でしたが、近年の研究によると、縄文時代の後期にはすでに日本各地で稲作が始まっていたと考えられています。それまで狩猟採集をしていた日本人の生活は、稲作によって大きな変化を遂げました。食料を求めて各地を移動する必要がなくなり、一か所に定住して農耕を行うようになりました。

 農作業は少人数ではできませんから、多くの人々が集まって協力し合いながら集団で暮らしました。やがて、それが「ムラ」という共同体を形成し、さらに「クニ」へと発展していきました。米の収穫量に差が出てくると、米を豊かに所有する富裕層とわずかに所有するだけの貧困層が生じてきます。財政力の格差は権力の格差につながり、支配階級と被支配階級に分化していきます。

 近世になると、支配者の権力の大きさは、その所領地における米の収穫量、すなわち「石高」で示されるようになりました。たとえば、加賀、能登越中の三国を所領した前田家の石高は「加賀百万石」と称されていますが、年間に百万石もの米を生産できる広大は地域を支配しました。

 一石とは、十斗であり、百升であり、千合に相当します。仮に一人が一日三合ずつご飯を食べると、一年間で約一石の米を消費することになります。つまり百万石とは、単純に計算すると百万人の領民の米を賄えるほどの豊かな所領地なのです。

 米は日本の食文化だけでなく、日本人の宗教観や行動様式や生活習慣にも大きな影響を与えました。春に田植えが始まり、秋に稲刈りが終わるまで、日本人の暮らしは米とともに暦が巡っていきます。正月には餅をついて歳神様にお供えし、五穀豊穣を祈念します。夏には農作業の労をねぎらい、稲の成長を願って夏祭りを行います。秋には豊作を祝って収穫祭を催し、新米の供物を捧げて神様に感謝します。

 米は大切な主食ですから、美味しく食べるための料理方法が古くから伝承されてきました。米には、粘り気が強い「もち米」とあまり強くない「うるち米」があります。一般に、もち米は蒸して餅や「おこわ」を作り、うるち米は炊き上げてご飯を作ります。

 白米のご飯ももちろん美味しいのですが、他の具材と一緒に「炊き込みご飯」や「混ぜご飯」にすることもあります。また、水分を多くして柔らかい「おかゆ」を炊くこともあり、丸く握って「おむすび」を作ることもあります。日本にはたくさんの米料理がありますが、いずれの料理も、米という食材の素晴らしさを味わうことができます。

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