「寒天は海藻から作られるのに海のない長野県が寒天の名産地なのはなぜか」は、次の8章を書いています。
「寒天と天草」
「寒天とみつ豆」
「寒天と心太(ところてん)」
「寒天と偶然の発見」
「寒天と隠元禅師」
「寒天と信州」
「寒天と食文化」
「寒天と新しい可能性」
寒天は万人に愛される食べものですが、謎の多い不思議な食材でもあります。天草という海藻から作られることはよく知られていますが、天草は鮮やかな赤紫色をしています。それが長い工程を経て無色透明の寒天に生まれ変わります。何とも不思議です。
また題名にある通り、海のない長野県が寒天の名産地なのはたいへん不思議です。その謎は本書を読んでいただければわかりますが、じつは海から遠く離れた地域に海産物が流通するのは珍しいことではありません。
たとえば内陸にある京都ではハモが獲れませんが、ハモ料理が有名です。広島県の備北地方も内陸ですが、サメ料理が郷土料理として知られています。海のない長野県が寒天の名産地なのも理に適った理由があります。
しかし最大の謎は、寒天が古くから愛され続けていることです。食物繊維が主成分ですからカロリーは極めて低く、いわば腹の足しにならない食べものです。主食と違って、生きていくためにどうしても食べなければならないわけではありません。しかも製造には手間も暇もかかります。それでも寒天は万人に愛されています。なぜ人は寒天を食べるのでしょうか。
そこには大きな秘密があります。人類がさまざまな食文化を生み出してきた秘密といっても過言ではないかもしれません。美味しいものを食べることの意味を、寒天を通して考えてみたいと思います。