おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

食べてよいキノコ悪いキノコ

秋はキノコの季節です。

 

キノコの炊き込みご飯やキノコ汁など、

美味しいキノコ料理が味わえます。

 

山にはたくさんの野生のキノコが生えています。

キノコ狩りも秋の楽しい行事です。

 

しかし、食べられない毒キノコがあります。

命を落とすほどの猛毒を持つものもあります。

 

熟練したキノコ採りの名人でさえ、

近年は悩むことがあるそうです。

 

地球温暖化のせいで、毒キノコの生息域が、

昔と比べると変わりつつあるからです。

 

毒があるかどうか、素人が判断するのは危険です。

市販されているキノコを買い求めましょう。

 

ところで、今昔物語集には不思議な茸の話が載っています。

舞茸を食べて舞ってしまうという話です。

 

ある木こりが山道を歩いていると、

向こうから怪しい尼の一団がやって来ます。

 

全員が踊っているのです。

木こりはびっくりしました。

 

尼の一人は木こりにこう言います。

きっとあなたは驚いているでしょう。

 

私たちは里に住む尼僧ですが、

仏様に供える花を摘みに来ました。

 

山に生えているキノコを焼いて食べたところ、

勝手に体が動き出しました。

 

踊りを止めようと思っているのですが、

どうにも止めることができません。

 

そう言って尼たちは山を下りて行きました。

ところが、それで話は終わりません。

 

尼たちが食べ残していったキノコを、

木こりも食べてしまいます。

 

すると体が勝手に動き出します。

止めようにも止められません。

 

仕方なく、家に帰り着くまで

踊り続けたということです。

 

もちろん舞茸を食べても舞うことはありません。

名前の由来は、舞いたくなるほど美味しいからです。

 

今昔物語集に描かれているキノコは、舞茸ではなく、

オオワライタケではないかと考えられています。

 

幻覚を引き起こす成分が含まれているので、

食べてはいけない毒キノコの一種です。

 

もし食べると、極度に興奮して呼吸困難になったり

異常な行動を取ったりする可能性があります。

 

踊り出すこともないわけではないようです。