おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

そういえば最近スーパーで米が復活している

つい一か月ほど前は、スーパーに米がありませんでした。

いつ入荷するかもわかりませんでした。

 

「令和の米騒動」とまで言われた深刻な事態でした。

 

しかし、ようやく米不足が解消されつつあります。

今年度の新米が流通し始めているからです。

 

それにしても、米不足は全く青天の霹靂でした。

現代は米が余って困っているとばかり思っていました。

 

大豆が不足し、小麦粉が不足し、ついに米まで不足しました。

主食といえども安定供給が難しい時代なのでしょうか。

 

思い出されるのは1993年の米不足です。

平成の米騒動」が起きた年です。

 

夏の天候不順の影響で記録的な不作となりました。

政府は緊急にタイから米を輸入しました。

 

それまで、国内の米作農家を保護するために、

一粒たりとも輸入させないと言っていた政府がです。

 

やはり、背に腹は代えられないのでしょうか。

手の平を返したように輸入を始めました。

 

ところが、タイ米はインディカ米の一種です。

長粒米とも呼ばれる粘りの少ない品種です。

 

パラパラしていて、おにぎりを作ることもできません。

 

それに対して、日本の米はジャポニカ米です。

デンプン質の多い短粒米です。

 

もっちりとした食感が魅力の米です。

 

せっかく輸入されたタイ米ですが、残念ながら

その美味しさは日本人には理解されませんでした。

 

日本の炊飯器ではタイ米を美味しく炊くことができず、

料理方法も全く異なるからです。

 

しかし、タイはインドに次ぐ世界第二位の米の輸出国です。

タイ米の美味しさは世界が認めています。

 

輸入されたタイ米が日本で受け入れられなかったのは、

炊き方や料理方法が知られていなかったからです。

 

それはある程度やむを得ないことかもしれませんが、

タイ米が廃棄されることには私は心が痛みました。

 

何よりも、手塩にかけて米を育てたタイの農家に失礼です。

食べられず棄てられたと知ったらどんなに悲しむでしょうか。

 

一粒の米には七人の神様が宿っています。

だから残さず食べなければなりません。

 

私は子どもの頃、そう教わりました。

 

今回の「令和の米騒動」は神様の声かもしれません。

「日本人よ、謙虚になれ」とおっしゃっているのです。

 

たとえ新米に助けられても、感謝の心を忘れず、

古米や古々米を無駄するなとおっしゃっています。

 

日本における稲作は、二千年に及ぶ歴史があります。

 

しかし、お腹いっぱい白米を食べられるようになったのは、

わずか数十年前のことです。

 

日々、ありがたくご飯をいただきたいと思います。