海のパイナップルと呼ばれる食材があります。
ホヤのことです。
刺身や酢の物にして食べるあのホヤです。
ホヤ貝と呼ばれることもありますが、貝類ではありません。
では、何なのかかと問われると簡単には答えられません。
生物学的には尾索(びさく)動物に属します。
セキツイ動物に近い種だそうです
軟体動物ではありません。
日本では古くから食材として用いられてきましたが、
現在も東北の三陸地方で広く流通しています。
私は幼い頃、仙台に住んでいたことがありますが、
夏の早朝によく「ホヤ売り」が来ました。
「ホヤー、ホヤー」と声をかけながら
新鮮なホヤを売り歩いていました。
ホヤは鮮度が命の食材です。
生きているホヤほど美味しいものありません。
磯の香りに包まれてほのかな甘みがあります。
ぷりぷりした食感が最高です。
しかし鮮度が落ちるのが早く、独特の臭いを発します。
そのため、ホヤを苦手とする人も少なくありません。
残念ながら、かつて首都圏の多くの店のホヤがそうでしたが、
近年は、生きたホヤを提供する店も増えています。
本当に美味しい新鮮なホヤを味わえる機会が増えたことは
喜ばしいことです。
ホヤの名誉のために言いますが、ホヤは極上の海の幸です。
ホヤの頭には二つの突起物があります。
それを切って中の水を出します。
ホヤの体液であり、「ホヤ水」と呼ばれています。
磯の香りが強く、ホヤの身を洗うのに使います。
縦半分に切って、オレンジ色の身を取り出します。
身についたワタを取り除き、ホヤ水で身を洗います。
食べやすいように身を削ぎ切りにして三杯酢に和えます。
そのときにキュウリは欠かせません。
「キュウリがなければホヤを食うな」という格言が、
仙台をはじめ三陸地方に伝わっています。
ホヤとキュウリの相性がよいことを示す格言ですが、
それだけではありません。
ホヤの旬は夏ですから、キュウリの旬と重なります。
キュウリかなければ、ホヤの旬ではないということです。
三陸地方の人々は本当に美味しいホヤの食べ方を知っています。
だからこそ、そうした格言が生まれたのだと思います。
ホヤの名誉のために言いますが、ホヤは極上の海の幸です。