おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

太刀魚はなぜ太刀のように銀色に輝くのか

太刀魚はまるで太刀のような細長い体をしています。

その形から名づけられたことは疑いようもありません。

 

英語でも「サーベルフィッシュ」と呼ばれています。

「舶刀」を意味する「カットラス」ともいいます。

 

しかし、じつはもう一つ別の命名説があります。

立って泳ぐから「立ち魚」という説です。

 

海面近くの獲物を狙うときは垂直の向きになります。

その姿が立って泳いでいるようにも見えるのです。

 

形ばかりか、色までが太刀のように光っていますが、

なぜ太刀魚は銀色に輝くのでしょうか。

 

それは、太刀魚の体表にはウロコがなく、

グアニン泊に覆われているからです。

 

グアニン泊とは銀色の色素を持つプリン体です。

サンマなどの青魚の体表にも含まれています。

 

かつては太刀魚の体表から銀粉が採取されて、

模造真珠の原料になっていたそうです。

 

その物質のかげで、太刀魚は太刀のように輝くのです。

 

もっとも生きているときは、海の青い色が映えるのか、

青く美しい金属光沢を持っているそうです。

 

水揚げされると、刀剣の灰白色を帯びてきます。

 

太刀魚はたいてい切り身で売られているので、

全体の姿を見ることは滅多にありません。

 

鋭い歯を持ち、精悍な顔つきをしています。

名前も武士なら、姿も武士らしい魚です。

 

淡白な割には旨みがあるので焼き魚に最適です。

潔い風味まで、まるで武士のような魚です。