おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

水無月という名前の和菓子

水無月(みなづき)とは陰暦の六月のことです。

現在の暦では六月下旬から八月初旬に当たります。

 

なぜ水の無い月と呼ばれるのか諸説があります。

 

梅雨が明けて河川の水量が減るからという説もあれば、

炎天下で水か枯れるからという説もあります。

 

逆に「水の月」が語源だともいわれています。

水田に十分に水か張る季節だからです。

 

いずれにしても水無月は盛夏です。

 

平安時代宇多天皇は、水無月に雪景色を見たいとおっしゃって

宮中の従者たちを困らせたと伝えられています。

 

仕方なく、御所から臨める衣笠山を白い絹布で覆い尽くし、

雪景色に見立てたという故事が残っています。

 

昔から宮中では水無月に「夏越の祓」が行われていました。

邪気を祓い、残り半年の無病息災を願う行事です。

 

また貴族の間では、真夏の暑気を払って涼をとるために、

水無月に氷を食べる風習もありました。

 

しかし、真夏になぜ氷があったのでしょうか。

 

京都は四方を山に囲まれている盆地ですから、

陽当たりの悪い山陰に「氷室」が作られました。

 

冬に積もった雪を氷室に貯蔵しておくと

夏でも氷を食べることができます。

 

もちろん真夏の氷はたいへん貴重なものです。

そこで氷に代わる和菓子が作られました。

 

それが「水無月」という名前の和菓子です。

ういろうの上に小豆が乗っています。

 

真白なういろうは氷室から切り出した氷を模しています。

小豆の赤い色は邪気祓いを表しています。

 

長方形を対角線に切った三角形をしていますが、

一年の半分を意味しているそうです。

 

いかにも京都らしい品のある和菓子です。

夏の銘菓として今も愛されています。