おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

ラザニアとラビオリはどちらが先輩か

ラザニアの語源は、古代ローマのラガヌムという料理です。

たいへん古い歴史を持つ料理と考えられます。

 

ただし、料理方法は現代のラザニアとは異なっていました。

野菜汁と香辛料で小麦粉を練って油で揚げていたようです。

 

後には、何層かの生地に肉をはさんで焼くようになりました。

今日のパイのような料理だったとも推定されます。

 

ラザニアがイタリアの文献に登場するのは14世紀です。

乾燥パスタではなく、発酵した生パスタでした。

 

指三本分ほどを一辺とした四角形のパスタ生地に分けたと

文献には記されています。

 

形状から判断すると、ラビオリではないかと思われますが、

ラビオリのように具を包む料理ではなかったようです。

 

茹でたパスタを器に盛って、卸したチーズをかけます。

その上にさらにパスタを乗せてチーズをかけます。

 

それを何層も重ねて食べていたようです。

現在のラザニアにやや近い料理です。

 

この時代のイタリアには、まだトマトが伝わっていません。

一般にトマトが料理に使われるのは16世紀以降のことです。

 

ですからトマトソースのパスタはまだ登場していません。

パスタはたいていチーズと香辛料で食べられていました。

 

やがて、重ねるパスタから包むパスタが現れます。

ラザニアを小型化したものがラビオリです。

 

料理の幅が広がったことから、ラザニアと同様に、

あるいはラザニア以上にもてはやされます。

 

ラザニアの方がラビオリの先輩ではありますが、

活躍する場はラビオリの方が多かったようです。

 

中世の料理の書物にもラビオリが紹介されていますが、

贅沢な食材をふんだんに使った料理も載っています。

 

ただし、両者に共通していたこともあります。

 

スパゲッティやマカロニが、庶民のパスタであるのに対して

ラザニアとラビオリは、貴族のパスタであるという点です。

 

おそらく貴族には、多数の専属の料理人がいたと思われます。

腕を競い合って美味しいパスタ料理を作ったことでしょう。

 

現代では貴族専属の料理人はいないかもしれませんが、

その代わり、才能ある料理人が多数活躍しています。

 

イタリアのどこのリストランテに行っても

美味しいパスタ料理があります。

 

パスタ料理を愛する人に貴族も庶民もありません。

誰もが美味しい料理を楽しむことができます。

 

私たちはパスタの神様に感謝しなければなりません。