おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

フォアグラは虐待の産物か

世界で最も高級とされているレバはフォアグラです。

ガチョウやアヒルの肝臓のことです。

 

フランス料理ではとくに高級食材として珍重されています。

クリスマスやお祝いの御馳走には欠かすことができません。

 

キャヴィア、トリュフとともに世界三大珍味とされていますが、

それほど入手が困難というわけではありません。

 

まともなレストランであれば、むしろありふれた食材です。

日本料理の格でいうと、本マグロの中トロあたりでしょうか。

 

ちなみに、キャヴィアとトリュフを日本料理の格でいうと、

トラフグの白子と松茸あたりではないかと私は考えています。

 

フォアグラの特徴は、何と言ってもその脂肪分にあります。

全体の6割を脂肪分が占めます。

 

フォアグラの脂肪は、牛や豚の脂身と違って常温でも融けます。

そのためパテやテリーヌのような冷製料理にも向いています。

 

逆にソテーするときは気をつけなければなりません。

強火では、せっかくの脂肪分が流れてしまいます。

 

トリュフとの相性がよく、一緒にソテーにすることがあります。

ヒレステーキに乗せたロッシーニ風は、定番料理の一つです。

 

ところで、フォアグラは一羽から一個しか取れません。

そのためできるだけ鳥を大きく太らせる必要があります。

 

フランスには昔からエサを無理やり食べさせる職人がいました。

鳥の口に漏斗のような器具を突っ込み、エサを流し込むのです。

 

窒息しない程度に大量のエサを食べさせる技術があるそうです。

鳥は、やがてお腹が地面に付くほどに丸々と成長します。

 

こうした飼育方法をフランス語でガヴァージュといいます。

日本語では、「強制給餌」と訳します。

 

伝統的な飼育方法ですが、やや残酷にも感じられます。

虐待だと主張する人も少なくありません。

 

一方で、苦痛を与えるものではないという主張もあります。

動物愛護の観点から、論争は今も続いています。

 

現在では強制給餌を禁止する国や地域が増えつつありますが、

代わりに野生に近い状態で飼育する方法も模索されています。

 

豊かな自然環境で放し飼いにして伸び伸び育てる方法です。

ストレスがなく良質のフォアグラが生産できるそうです。

 

飼育期間とコストはかかるかもしれませんが、

もともとフォアグラは珍味です。

 

そのくらい手間暇かけてもよいのではないでしょうか。