おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

牛レバ刺しにはもう会えないのか

牛レバ刺しが食品衛生法で禁止されてから10年になります。

現在では、お店で牛レバ刺しを提供することができません。

 

お肉屋さんでも生食用の牛レバは販売していません。

取り扱っている牛レバはすべて加熱調理用です。

 

牛レバ刺しはどこで売っているのかという問い合わせが多く、

当初は、お肉屋さんにも戸惑いがあったそうです。

 

新鮮な牛レバなら、加熱調理用でも生で食べて大丈夫だろうと

安易に考えているお客さんもいたといいます。

 

たとえ新鮮でも牛レバの生食は安全ではありません。

食中毒を引き起こす危険性があります。

 

牛レバ刺しが禁止されて残念な気持ちはわかりますが、

軽率な行動を取るべきではありません。

 

仮に生で牛レバを食べて食中毒が発生した場合、

販売したお肉屋さんに迷惑がかかります。

 

何よりも食べた本人が重篤な症状に陥るかもしれません。

腸管出血性大腸菌により死亡する事例もあります。

 

では、牛レバ刺しにはもう会えないのでしょうか。

 

本物の牛レバ刺しを食べることはできませんが、

合法牛レバ刺しという料理があります。

 

低温調理法によって、牛レバ刺しの味と食感を再現した料理です。

厚生労働省の定めた加熱調理の基準をきちんと順守しています。

 

厚生労働省では、肉の中心部の温度を63℃で30分以上保つか、

または75℃で1分以上保つ必要があると定めています。

 

真空パックした牛レバを一定温度で一定時間湯煎にかけて

生肉に近い状態を保つ料理です。

 

焼いたり、炒めたりするのとは違ってしっとり仕上がります。

しかも加熱によって旨みが活性化します。

 

ただし、火の通し過ぎには注意しなくてはなりません。

レバだけに火加減は何より肝心です。

 

見た目はローストビーフを思わせる鮮やかなピンク色です。

さすがに牛レバ刺しのような深い小豆色ではありません。

 

しかし、味と食感は牛レバ刺しそのものです。

塩とゴマ油で食べてみるとよくわかります。

 

まるで10年前に別れた恋人と再会した気分です。

感動的な再会です。