おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

鯉の生き胆は万能薬か

鯉は滋養に富み、昔から強壮剤として用いられていました。

とくに生き胆は、病弱な人の薬とされてきました。

 

宮沢賢治が肺炎のために次第に体が衰弱していったときに

周りの人が心配して、こっそり鯉の生き胆を与えました。

 

宮沢賢治は、牛乳や鶏卵さえ摂らない菜食主義者ですから、

鯉の生き胆を食べさせられたと知って涙を流したそうです。

 

生きものの命を奪ってまで自分が生きたいとは思わない。

このようなかわいそうなことは二度としてくれるな。

 

そう訴えたと伝えられています。

宮沢賢治らしい逸話です。

 

鯉の生き胆は、果たして万病に効くのでしょうか。

 

たしかに鯉の栄養価が高いのは事実です。

滋養強壮、疲労回復の効果もあるようです。

 

しかし生き胆が特別な薬ということではないようです。

 

鯉はたいへん生命力のある魚です。

寿命も長く、数十年も生きることがあります。

 

そのため生き胆が珍重されたのではないでしょうか。