アユの最高の食べ方は、何と言っても塩焼きです。
希代の美食家、北大路魯山人もそれは認めています。
塩焼きにして、うっかり火傷するほど熱いところを
ガブッとやるのが香ばしくて最上と言っています。
しかも、鵜飼で獲れたアユが一番とも言っています。
ウがアユを飲み込んで即死させるからだそうです。
通常の漁法で水揚げされたアユは、次第に衰弱するので
味が落ちるということです。
ただし、アユの体にウの歯形が付いてしまうので、
味がよくても見た目がよくないそうです。
アユひとつを取っても、素材の良し悪しを見極め、
最高のものを求める姿勢は、さすが魯山人です。
その魯山人は京都の出身ですが、子どもの頃に
近所の魚屋で大量のアユのあらを見たそうです。
魚屋にその訳を訊くと、三井さんからの注文があり、
アユの「洗い」を作った残りだということです。
ずいぶん贅沢なアユの食べ方があるものだと
子ども心に魯山人は感心したそうです。
やがて、大人になってアユの洗いを食べたとき、
その美味しさに魯山人は驚いたということです。
あの舌の肥えた魯山人が驚くほどですから
よほど美味しいものなのでしょう。
数ある洗いの中で一番美味しいのは、
アユの洗いだと断言しています。
しかし、アユは淡水魚です。
生食すべきではありません。
いかに清流に棲んでいるからとは言え、
寄生虫のリスクがあるからです。
淡水魚を洗いや刺身で食べるのは危険です。
専門の料理店で食べるならばともかく、
素人料理の生食は避けるべきです。
しかし魯山人の時代には、そうした意識が
低かったのではないでしょうか。
彼自身も、じつは食中毒で亡くなっています。
半生のタニシが原因と言われています。
火を通し過ぎないタニシが美味しいと言って
好んで半生を食べたそうです。
生で食べる淡水の魚介類は、禁断の味です。
アユの洗いも決して例外ではありません。