おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

ほうとうの美味しさ

ほうとう山梨県を中心とした地域の郷土料理です。

小麦粉を練って麺を作り、味噌味で煮込みます。

 

ほうとうの麺は、うどんよりも太く平たく短く切ります。

うどんのように生地を寝かせることはありません。

 

下茹でをせずに、生麺のまま大鍋で煮込みます。

うどんよりは「すいとん」に近い料理法です。

 

また、カボチャなどの野菜がたっぷり入るのも特徴です。

少し煮崩れたカボチャの甘みが味噌味によく合います。

 

うどんはどちらかというと麺そのものを味わう料理です。

釜揚げうどんやざるうどんがそのよい例です。

 

それに対してほうとうは、具沢山の旨みを味わう料理です。

何を入れるかは、地域や家庭によって異なります。

 

具沢山にする理由は美味しいからだけではありません。

量を増やすための工夫たったのではないでしょうか。

 

もともと甲斐の国は、稲作が盛んな地域ではありません。

小麦を中心とした山間地特有の食文化を持っていました。

 

野菜をたっぷり入れると、ほうとうが少なくて済みます。

小麦を大切に食べていたのだと考えられます。

 

現代の私たちの食生活はたいへん豊かになりました。

たくさんの美味しいものに恵まれています。

 

しかし、小麦の自給率は十数パーセントしかありません。

つまり海外からの輸入に頼る不安定な状況なのです。

 

外国で戦争が始まると、輸入が止まり価格は高騰します。

投機的に買い占められてしまうリスクもあります。

 

貧しい国の人々は日本よりもさらに悲惨な状況です。

深刻な食糧不足の危機にさらされてしまいます。

 

平和を願い、小麦に感謝していただかなくてはなりません。

 

ところで、ほうとうとは変わった名前です。

その語源は何でしょうか。

 

武田信玄が、伝家の宝刀を抜いて食材を切ったそうです。

そのため宝刀(ほうとう)と名づけられたとか。

 

あくまで伝説ですが。