おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

菱餅はなぜ菱形なのか

ひな祭りには菱餅をお供えします。

 

菱餅は、桃、白、緑の三色を重ねます。

三色それぞれに由来と歴史があります。

 

もともとは緑一色だけの餅だったそうです。

春の七草の一つゴギョウを使っていました。

 

ゴギョウは、別名「母子草」といいます。

ですから、母子餅とも呼ばれました。

 

しかし母と子を臼と杵でつくのはかわいそうです。

そこで代わりにヨモギを使うようになりました。

 

後になって白い餅が加わり二色になりました。

白い餅には菱の実を入れることもありました。

 

菱の実には二つの尖った角があります。

ジャンケンのチョキのような姿です。

 

人形劇「ひょっこりひょうたん島」に出ていた

ドン・ガパチョの髭にも似ています。

 

魔除けや厄払いには最適な実です。

しかし菱の実が収穫されるのは秋です。

 

春のひな祭りの季節には入手が困難です。

そこで形だけ菱の実の真似をしました。

 

菱形をした菱餅の誕生です。

菱餅の名前もそのときに生まれました。

 

さらに桃色が加わり三色になりました。

桃色はクチナシで着色しています。

 

桃は古来不老長寿の実とされています。

桃の節句に相応しい色です。

 

菱餅は、上から順に桃、白、緑で重ねます。

これは春の到来を表しています。

 

白い雪の下には緑色の若葉が芽吹き、

上には桃色の花が咲いています。

 

この組み合わせは、菱餅だけではありません。

三色団子も同じです。

 

お花見の団子にも春を喜ぶ意味があるようです。