私たちにとって味噌汁はたいへん身近な料理ですが、
味噌汁の具の中で最も愛されている素材は何でしょうか。
一番人気が高い味噌汁の具は豆腐だそうです。
ここ数十年来ずっと第一位を守り続けています。
第二位はワカメですが、豆腐には遥かに及びません。
それでも第二位の座を長年保ち続けています。
第三位以下は、地域によってかなり差が大きいようです。
長ネギ、油揚げ、ジャガイモ、大根、シジミなどが続きます。
里イモ、小松菜、玉ネギ、白菜、アサリが入ることもあります。
カボチャ、蕪、モヤシ、キャベツ、卵、お麩も好まれています。
昭和三十年代に発行された主婦向けの古い雑誌を見てみると、
味噌汁の具のランキングは、現代とあまり変わっていません。
もっと古い明治時代の横浜開港当時の世相を記した文献を調べてみると、
港湾労働者の食事にはよくニンジンの味噌汁が添えられていたようです。
おそらくその時代は、味噌汁の具の種類も少なかったと思われます。
ニンジンや大根や長ネギは昔から定番だったのではないでしょうか。
百数十年前の味噌汁が、現代の私たちの味噌汁と同じであると考えると、
何だか親しみが湧いてきます。
ところで、味噌汁の具は一種類に限るべきであるという意見があります。
二種類以上使うと素材の味を純粋に味わうことができないそうです。
粋を尊ぶ江戸っ子だけではなく、全国的にそういう傾向が見られます。
その意見には、おそらく倹約の意味もあるのかもしれません。
二種類以上を使うともったいないという考え方です。
味噌汁は毎日必要な料理ですから、もし二種類の具があるのならば、
二日に分けて味噌汁を二回作ることができます。その方が得策です。
しかし、具を組み合わせることでより美味しくなることもあります。
豆腐と油揚げがそのよい例です。他の素材とよく合います。
豆腐は味噌汁に優しさを与え、油揚げは味噌汁に力強さを与えてくれます。
面白いことに、豆腐と油揚げの組み合わせを好む人もいます。
豆腐も油揚げも味噌も原料は大豆ですから相性は悪くはありません。
むしろ意外な風味と食感を楽しむことができます。
具の組み合わせで一番人気が高いのは、豆腐とワカメだそうです。
やはりそうかという感じがします。納得できる味噌汁です。
最近は、味噌汁にも新しい素材が使われるようになってきました。
アスパラ、エリンギ、オクラ、カリフラワー、レタス、豆苗などです。
ちょっと変わったところでは、トマトの味噌汁というのもあるそうです。
意表を突く素材も面白いのですが、やはり味噌汁の具は定番に限ります。
他の料理と違って、あまり冒険してみようとは思いません。
慣れ親しんだ素材を使った味噌汁は、安らぎを与えてくれます。
それが、毎日飽きない味噌汁の条件だと思います。