「山の芋が鰻となる」ということわざがあります。
あり得ないことが実際に起きることのたとえです。
山芋も鰻も長細い形をしています。
その形から連想できなくもありません。
精がつく食べものであることも似ています。
肉食が禁じられている僧侶がこっそり鰻を食べるときに
口実として鰻を山芋と呼んだともいわれています。
しかし山芋が鰻になる本当の理由は鰻の生態にあります。
鰻の産卵はじつは昔から謎に包まれています。
川や湖などの淡水域で成長した鰻は海に下ります。
そのため海下(うなくだり)が鰻の語源ともされています。
鰻はフィリピン海域で産卵すると考えられています。
卵から孵化した稚魚はシラスウナギと呼ばれます。
はるばる日本まで戻ってきて川を上ります。
鰻の養殖はこのシラスウナギを捕まえて育てています。
ですから鰻が産卵するところを見た人は誰もいません。
山芋が鰻に変わるという迷信が生まれたのも当然です。
年々シラスウナギの漁獲量は激減しています。
そのため養殖鰻の価格もウナギ上りです。
二ホンウナギが絶滅危惧種に指定される恐れもあります。
このままでは鰻の蒲焼きが食べられなくなるかもしれません。
しかし鰻の完全養殖を実現するための研究が進められています。
近い将来、鰻の産卵を見ることができる日が来るでしょう。
あり得ないことが現実に起きる可能性があるのです。
山の芋が鰻になるかもしれません。