明治時代に書かれた「食道楽」という小説があります。
さまざまな料理や食材が作品の中に描かれています。
その中に豚肉の刺身の話が出てきます。
牛刺しや馬刺しという料理はありますが、
豚肉は刺身で食べられるのでしょうか。
もちろん食べられません。
豚肉を生で食べることはとても危険です。
重い食中毒を引き起こす可能性があります。
新鮮な肉であれば安全ということはありません。
食品衛生法では豚肉を生食用として販売することを禁止しています。
厚生労働省でも十分に中心部まで加熱調理するよう呼びかけています。
では「食道楽」に登場する豚肉の刺身とはどんな料理でしょうか。
作品の中では次のように作り方が説明されています。
豚の三枚肉をかたまりのまま大きな鍋で茹でます。
一、二時間も茹でると杉箸がすうっと通ります。
大きな丼鉢に醤油を注ぎ、茹で上がった豚肉を漬けます。
一日も漬けると醤油が肉に滲み込んで旨い味になります。
肉を薄切りにして刺身のように盛り付けます。
溶き芥子を添えていただきます。
簡単に言うと「茹で豚の醤油漬け」のような料理です。
たしかにお刺身のように見えますね。