バナナは世界中で愛されている果物です。
デザートとしてだけではなく主食としても食べられています。
アフリカでは料理用のバナナが一般的に栽培されているそうです。
料理用のバナナはまだ実が青くて硬いうちに収穫されます。
ですから手で皮を剥くことができません。
デザート用バナナのような甘味はなく、芋類のような食感だそうです。
どのように料理されるのか、とても興味があります。
日本に輸入されるバナナもまだ実が青いうちに収穫されます。
害虫の侵入を防ぐために完熟したバナナの輸入が禁じられているからです。
そのため輸入後にエチレンガスによってバナナを黄色く熟させます。
これを追熟といいます。
エチレンは植物ホルモンの成分であり、成長を促す働きがあります。
果物の中にはエチレンを発するものがいくつかあります。
リンゴとキウイフルーツを一緒に保存しておくとキウイフルーツが
甘くなるのはリンゴが放出するエチレンのお陰です。
昔はエチレンを使わず、船で輸送する途中で自然に熟させました。
そのため日本に到着する頃には熟成し過ぎてしまうこともありました。
熟し切って色が黒ずんでしまったバナナは商品価値が下がります。
そこで登場したのが「バナナの叩き売り」です。
巧みな話術で大量のバナナを売りさばきます。
北九州の門司港が発祥と伝えられています。
その口上は「ガマの油売り」と並んでまさに日本の伝統的な話芸です。
昨今は残念ながらお目にかかる機会がなくなりました。
バナナの叩き売りが活躍した頃はバナナがまだ高級果実の時代でした。
1本の値段が、現在でいえばメロン1個に匹敵するほどでした。
ですから当時は、病気の見舞いにバナナをもらうと患者は覚悟したそうです。
もう自分は助からないからこの世の名残にバナナをいただくのかと。
今ではもちろん笑い話ですが。
現在では低価格で手軽に食べられて、栄養価が高くて美味しくて、
しかも一年中安定して供給される本当にありがたい果物です。
感謝してバナナをいただかなければなりません。
ところで、江戸時代の俳人松尾芭蕉の芭蕉とはバナナのことです。
もっと正確にいうと、バナナという植物のことを芭蕉と呼び、
バナナの実のことを実芭蕉といいました。
古くから日本で栽培されていますが、観賞用だけではなく、
茎の繊維から芭蕉布を織ることもありました。
しかし本州では芭蕉の実が生ることはありません。
沖縄あたりが北限とされているそうです。
自分の俳号に決めたと伝えられています。
そういう話を聞くと少し変わった命名にも感じられますが、
じつは現代でも「吉本ばなな」というペンネームの作家がいます。
名前の由来はわかりませんが、違和感があまりないのは
松尾芭蕉のお陰でしょうか。