田んぼから姿を消した生き物はドジョウだけではありません。
稲刈りの季節によく見かけたイナゴも最近は少なくなりました。
イナゴは稲の害虫ですが昔から貴重なタンパク源でもありました。
佃煮にして食べる風習は全国各地に見られました。
今でも観光地の土産店でイナゴの佃煮を見ることがありますが、
物珍しさに観光客が買うことはあっても一般的な惣菜ではありません。
イナゴの佃煮はたしかに見た目には抵抗感があるかもしれません。
しかし味と食感は魚介類の佃煮に近いものがあります。
とくにカルシウムが多く含まれていて栄養価の高い食品です。
海産物の少ない山間部では大切な食材でした。
私も子どもの頃は日常的に食べていました。
佃煮の作り方も教わりました。
田んぼで捕獲したイナゴは数日間籠に入れて絶食させます。
その後水洗いしてから大きな鍋で炒ります。
舌触りに悪い翅やトゲトゲのある後ろ脚は取り除きます。
醤油と砂糖で甘辛く煮込むと独特の良い香りがします。
しかし今ではイナゴを獲る機会がありません。
佃煮の作り方を知っていても作ることはもうありません。
虫を食べるなんてゲテ物食いだと思われるかもしれませんが、
昆虫食は今や世界的に注目されています。
将来の爆発的な人口増加に伴う食糧不足を解決するための
有効な手段と考えられているからです。
アメリカでは食用コオロギを粉末にしたものを小麦粉に混ぜて
クッキーやパンケーキが作られているそうです。
虫の姿をしていなければ食品として受け入れやすいのではないでしょうか。
しかも昆虫を飼育することは牛肉や豚肉を生産するよりも
低コスト、省エネルギーで環境にも優しいそうです。
イナゴの佃煮がもう一度見直される時代が来てほしいと思います。