6月19日は太宰治の桜桃忌です。桜桃とはサクランボのことです。
絶筆となった小説「桜桃」にちなんで名づけられたそうです。
甘酸っぱく艶やかなサクランボと廃退的な晩年の太宰治の小説は
似ても似つかないように思えます。
小説の中で桜桃を食べる場面がありますが全くおいしそうではありません。
家で待つ子どもたちに桜桃を持って帰れば喜ぶことを知りながら
そうしようとしない情けない父親が主人公です。
モデルはもちろん太宰治自身です。
この頃の太宰治にはもう生きる力がなかったのでしょうか。
「桜桃」は本当に心が痛む小説です。
桜桃忌の法要が営まれる時期はちょうど梅雨の季節です。
しとしと降る雨の中を墓参する太宰治ファンが故人を偲びます。
暗い墓石に真っ赤な桜桃が供えられます。
悲しいほどに鮮やかな色が印象的です。