おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

おこわとちまき

もち米を蒸したご飯のことを「おこわ」といいます。

強飯(こわいい)が転じた言葉です。

 

それに対して姫飯(ひめいい)という言葉があります。

こちらは柔らかく炊いたご飯のことです。

 

おこわは狭い意味で「お赤飯」のことを指すことがありますが、

「山菜おこわ」や「栗おこわ」など季節の素材を用いたものもあります。

 

私はよく「五目おこわ」を作ります。

 

鶏肉、ニンジン、ゴボウ、レンコン、干しシイタケを小さく切って

醤油とみりんと干しシイタケの戻し汁で煮ます。

 

やや濃いめに下味をつけておくのがコツです。

おこわの中でちょうどよい味のアクセントになります。

 

五目だからといって具を五種類に限る必要はありません。

コンニャクや凍り豆腐を入れて具を増やしても構いません。

 

季節によってタケノコやギンナンを使うこともあります。

干しエビや干し貝柱やチャーシューを使うと中華風になります。

 

もち米はよく研いでたっぷりの水にしばらく浸けておきます。

うるち米を混ぜて作るものもありますが、私はもち米だけのおこわが好きです。

 

蒸す直前にもち米の水気を切って具とあわせます。

蒸籠(せいろ)に入れて強火で蒸し上げます。

 

蒸し過ぎると「おこわ」ではなく「おもち」になってしまいます。

柔らかくなり過ぎず、もちもち感が残るように蒸します。

 

蒸すときは濡れ布巾でもち米を包み込みます。

蒸気が全体にムラなく行きわたるようにするためです。

 

私は蒸籠に笹の葉や蓮の葉を敷き、その上にもち米を乗せて蒸し上げます。

とても香り豊かなおこわができます。

 

じつはこの料理方法は「ちまき」を応用したものです。

もちろん私が発案したものではなく、広く一般に知られています。

 

ちまきは笹の葉や竹の皮でもち米をくるんで蒸した料理です。

昔は茅(ちがや)の葉で巻いたのでちまきと呼ぶそうです。

 

ちまきは中国から東南アジアにかけて古くから作られていますが、

作り方も形も中身もじつに様々です。

 

唯一ちまきに共通していることは冷めてから食べることです。

そのため、ちまきの葉をむいたときの香りも穏やかです。

 

それに対しておこわは蒸し立ての熱々をいただきます。

蒸籠を開けたときに立ち上げる芳香はちまきを遥かに凌ぎます。

 

笹の葉や蓮の葉に乗せて蒸したおこわは味も香りもご馳走です。

おこわという料理の奥深さを堪能できます。