おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

赤い豆腐は本当に存在するのか

赤豆腐というと、お坊さんの使う隠語です。 マグロの刺身のことを指します。 しかし、赤い豆腐は本当に存在します。 沖縄の「豆腐よう」がそうです。 一体どのような豆腐なのでしょうか。 沖縄では昔から豆腐作りが盛んです。 それは養豚が盛んだからです。 …

赤豆腐とはどのような料理か

赤豆腐という名の料理があります。 じつは豆腐ではありません。 マグロの刺身のことをいいます。 お坊さんの間ではそう呼ばれています。 仏教では生き物の殺傷が禁じられています。 肉や魚を食べることも許されません。 しかしこっそりと食べられることもあ…

サンマのいないスダチの季節

夏が終わり、スダチが出回る季節になりました。 青々とした姿を八百屋さんの店頭でも見かけます。 爽やかな香りと酸味は、何といってもスダチの魅力です。 さまざまな料理に合いますが、焼き魚には最適です。 とくにサンマの塩焼きには、やはりスダチです。 …

ハッサクの名の由来

ハッサクは、広島県因島原産の柑橘類です。 甘みは少なく、上品な酸味があります。 そしてほのかな苦みが特徴です。 甘く食べやすい柑橘類が現代の主流ですが、 古来の独特の存在感を示しています。 皮を剥いた瞬間に立ち昇る爽やかな香りは最大の魅力です。…

はりはり鍋のはりはりとは何か

日本語には表現力が豊かな擬態語が数多くあります。 もちもち、こりこり、ふわふわ、ぷりぷり、などです。 食べものの食感を表すのにたいへん便利な言葉です。 それがそのまま料理名になることもあります。 たとえば「はりはり鍋」が、その一例です。 食感か…

拙著「四季の菜摘み」紹介

食生活が豊かになると失うことがある。感謝の心である。「衣食足りて礼節を知る」という言葉があるが、逆もまた真なり。「衣食足りて礼節を欠く」こともある。今や、飽食の時代を迎え、豊かであるがゆえに、却って食べものに対する感謝の心が薄れ、礼節が失…

カツオのへそとは何か

カツオは魚類ですから、へそはありません。 ところが、カツオのへそと呼ばれる部位があります。 へそとはじつは心臓のことです。 焼肉でいえば、「ハツ」のことです。 心臓は筋肉の塊ですから、歯応えがあります。 こりこりした食感が特徴です。 これを味噌…

カツオのすり流し汁とは何か

カツオ一尾を丸ごと買うのでなければ作れない料理があります。 カツオの「すり流し汁」がその一つです。 カツオを三枚に卸すと、中央の骨の部分が残ります。 いわゆる「中落ち」と呼ばれるところです。 骨の間に身がついているので捨てるには惜しい部分です…

カツオの酒盗とは何か

カツオ一尾を丸ごと買うのでなければ作れない料理があります。 カツオの「酒盗」がその一つです。 酒盗とは、塩辛のことです。 塩辛は酒のつまみに最適な料理です。 旨い塩辛には旨い酒が付きものです。 酒が無ければ盗んでも飲みたくなります。 それが、酒…

ワラで焼いたカツオのたたきが美味しいのはなぜか

カツオの刺身は皮を引いて作ることが多いのですが、 江戸時代のカツオの刺身は皮つきでした。 美しい縞模様が銀色に輝くカツオの刺身は、 その名も「銀皮造り」といいます。 ただし、皮がついていると食べにくいので、浅く包丁目を入れます。 食べやすくなる…

カツオのたたきは本当にたたいて作るのか

「たたき」とは、肉や魚を包丁でたたいて作る料理のことです。 代表的な料理が「アジのたたき」です。 包丁で細かくたたくことによって表面積が大きくなります。 その分、薬味や調味料が馴染みやすくなります。 それがたたきの特徴であり、刺身とは違うとこ…

カツオはなぜ一本釣りするのか

カツオの一本釣りは昔から行われている漁法です。 文字通り、一本の釣り竿で一匹ずつ釣り上げます。 昔は魚群探知機がありませんでしたから、 目印になるのは、カツオドリでした。 カツオドリはイワシなどの小型の魚をエサとする海鳥です。 カツオもイワシな…

江戸っ子はなぜ戻りガツオが好きではないのか

初ガツオは初夏になると黒潮に乗って日本の近海にやってきます。 北上して三陸沖で夏を過ごすためです。 親潮と黒潮がぶつかる三陸沖は多くの魚が集まりエサが豊富です。 水温も低いので、カツオの身に脂が乗ります。 秋になると、今度は成長したカツオが産…

江戸っ子が大好きな初ガツオはどこから運ばれるのか

江戸っ子の初ガツオ好きは昔から知られていました。 青葉の季節になると待ちきれなくなるようです。 もともと江戸っ子は何でも初物が好きです。 よほど見栄っ張りなのでしょう。 しかし、残念ながらカツオは東京湾では獲れません。 最も江戸に近い漁場は三浦…

「女王様がご病気です」という名前のジャム

ダイダイはヒマラヤが原産で、中国を経由して日本に渡来しました。 ヨーロッパにも伝わり、ビターオレンジと呼ばれています。 ヨーロッパでもダイダイを生食にはしません。 ジャムか砂糖漬けにします。 ダイダイを皮ごとジャムにしたものをマーマレードとい…

ダイダイ侍とはどのような侍か

ダイダイは、お正月の鏡餅に飾る果実として知られています。 代々子孫が繁栄することを意味する縁起のよい果実です。 一つの果実が、何年も落ちることなく木に生り続けます。 そのため何代もの果実が同じ木に生っています。 代々にわたって家族が仲睦まじく…

全く違う二つの顔を持つキノコ

エノキタケはエノキの木の幹に生るので名づけられました。 実際にはエノキだけでなく、ケヤキや柿の木にも生ります。 紅葉がすっかり散って、雪が舞い始める季節になると出てきます。 雪が積もっても育つので、別名「ユキノシタ」ともいいます。 私たちがよ…

王様のトランペットのキノコ

「王様のトランペット」という名前のキノコがあります。 英語でもフランス語でもイタリア語でもそういう名前です。 じつは「エリンギ」のことです。 エリンギはよくイタリア語の名称であると紹介されますが、 正しくはラテン語であり、現代イタリア語ではあ…

フランスパンはなぜ棒状なのか

フランスパンのことをフランス語で「パン・フランセ」といいますが、 一般にはフランス本国以外のフランス語圏で使われる名称です。 フランスの人々はフランスパンのことをパン・フランセとは呼びません。 わざわざフランス国内で「フランスの」という必要は…

パンの耳の耳よりな話

食パンの周囲の皮の部分を「パンの耳」といいます。 サンドウィッチを作るときに切り取られてしまう部分です。 英語では、「パンのかかと」と呼ぶそうですが、 正しくは「クラスト」という名称です。 パン屋さんでは、よくパンの耳をまとめ売りしています。 …

食パンの「食」とは何か

食パンの「食」とは何でしょうか。 一般には「食用パン」の省略であるといわれています。 では、食用以外のパンがあるのでしょうか。 じつは、あります。 美術で使う「消しパン」というパンがあります。 木炭で描いたデッサンを消すときに使います。 もちろ…

お帰りなさいサクラエビ

待ちに待った駿河湾のサクラエビの春漁が始まりました。 解禁初日の水揚げは、なんと前年の約40倍だそうです。 長らくサクラエビの不漁が続いてきただけに嬉しい知らせです。 やっと「駿河湾の宝石」が帰ってきてくれました。 記録的な不漁に見舞われたのは5…

名前が知られていないけど美味しい魚 その4 オヒョウ

魚には「エンガワ」と呼ばれる部位があります。 背ビレや尾ビレの付け根にある帯状の筋肉のことです。 とくにヒラメやカレイのような側扁形の魚に発達しています。 日本家屋の「縁側」に形状が似ているので名づけられました。 魚のヒレを動かす筋肉の部分で…

名前が知られていないけど美味しい魚 その3 パンガシウス

天然の水産資源を守るため、さまざまな取り組みが行われています。 「MSC認証」という制度もその一つです。 「海洋管理協議会(MSC)」が認証ラベルを発行する制度です。 「海のエコラベル」とも呼ばれています。 漁獲方法、漁獲時期、漁獲量などが厳格に定…

名前が知られていないけど美味しい魚 その2 メロ

メロという名前の魚がいますが、 私はメルルーサの別名だと思っていました。 メルルーサという名前がまるで怪獣のように怖い名前なので 可愛らしくメロと改名したのではないかと。 しかし、メロとメルルーサはまったく異なる種類の魚です。 メロはスズキ目、…

名前が知られていないけど美味しい魚 その1 メルルーサ

近年、スルメイカ、サンマ、サバ、イカナゴが記録的な不漁です。 水産資源が枯渇しないように保護することは大切なことです。 魚を獲り過ぎないように制限することも重要ですが、 獲った魚を無駄にしないことも必要です。 水揚げされた魚が全て市場に出るわ…

イワシが増えるとサバが減る

3月8日は「サバの日」だそうです。 わかりやすい語呂合わせです。 せっかくだからサバを買おうと魚屋さんに足を運びますが、 残念ながら入荷量は少なく、価格はかなり高めです。 青々と輝く新鮮なサバはとても美味しそうなのですが、 お値段を見ると身がすく…

ケチャップはいつどこで誕生したのか

ケチャップというと普通はトマトケチャップを指しますが、 初めからトマトが使われていたわけではありません。 もともとケチャップは魚醤だったと考えられています。 魚醤は、魚介類を塩漬けにして発酵させた調味料です。 タイの「ナンプラー」やベトナムの…

「いしる」と「しょっつる」

「いしる」も「しょっつる」も魚醤(ぎょしょう)です。 魚介類から作られる醤油のことです。 醤油は、主に大豆などの穀物を原料にして作りますが、 魚醤はイワシなどの魚を発酵させて作ります。 「いしる」は能登半島北部で伝統的に作られてきました。 魚こ…

チョコレートのために働く子どもたち

バレンタインデーにチョコレートを贈る習慣は19世紀に始まったそうです。 イギリスのチョコレート会社がギフトボックスを発売したことがきっかけです。 もともとバレンタインデーはチョコレートを贈る日ではありません。 愛する人たちと贈り物を交換して幸せ…