おいしいことば

四季の料理と食材は美しい名を持っています。おいしい食べもののおいしいことばを探してみましょう。

高原で熟成するチーズ

イタリアに「ビット」というチーズがあります。 生産量が少なく、希少価値の高いチーズです。 ロンバルディア地方の渓谷で作られます。 スイスの国境に近い山岳地帯です。 原料は、この地方の伝統牛から得られる牛乳です。 搾乳される季節は限られています。…

洞窟で熟成するチーズ

食糧やワインの貯蔵庫のことをフランス語でカーヴといいます。 もともとは洞窟を意味する言葉です。 洞窟は光を遮り温度と湿度が一定なので貯蔵に適しています。 貯蔵だけでなく食品の熟成にも向いています フランスにロックフォールというチーズがあります…

銀行で熟成するチーズ

「イタリアチーズの王様」と呼ばれるチーズがあります。 パルミジャーノ・レッジャーノです。 名前は、パルマおよびレッジョ・エミリアという地名に由来します。 エミリア・ロマーニャ州、ロンバルディア州で作られています。 イタリアにはDOPと呼ばれる原産…

引き千切られて作られるチーズ

モッツァレラは不思議な食感を持ったチーズです。 初めて食べたときは、本当にチーズかと疑いました。 できたての寄せ豆腐のようでもあり、 つきたての餅のようでもあります。 一般の熟成チーズの過程を経ることはありません。 そのためフレッシュチーズに分…

シェフの帽子はなぜ長いのか

「レミーのおいしいレストラン」という映画があります。 ディズニーアニメーションの名作です。 主人公のレミーはネズミですが、料理の天才です。 パリのレストランで若い見習い料理人に出会います。 その若い見習い料理人はまったく料理ができません。 そこ…

カキフライは日本生まれの洋食

「和食」に対して「洋食」と呼ばれる料理があります。 その多くは、日本生まれの西洋風の料理を指します。 洋食のほとんどは、明治以降に考案されましたが、 カキフライもまた明治時代に生まれた洋食です。 カキに小麦粉、溶き卵、パン粉をまぶして高温の油…

フランスに渡った日本の牡蠣

生牡蠣はヨーロッパの人々に好まれていますが、 とくにフランスの人々に愛されています。 フランス料理のオードブルに生牡蠣は欠かせません。 そして生牡蠣にフランス産の白ワインは欠かせません。 フランスの牡蠣といえは「ブロン」という種類が有名です。 …

森を育てると牡蠣が美味しくなるのはなぜか

広島県の牡蠣養殖業者は昔から森の植樹活動に携わっています。 なぜ森を育てると牡蠣が美味しくなるのでしょうか。 海と山では無関係のように思われるかもしれませんが、 じつは海を豊かにするには山の環境が大切なのです。 広島湾にはいくつもの川が流れ込…

Rのつかない月に牡蠣を食べない理由

冬は牡蠣が美味しい季節です。 煮ても焼いても生でも美味しいです。 生牡蠣には紅葉おろしとアサツキがよく合いますが、 欧米では生牡蠣にレモンを搾るのが定番です。 今でこそ日本の刺身や寿司は世界的に知られていますが、 もともと欧米の人々は魚介類を生…

なんで関東で鶏肉のこと「かしわ」ゆわへんねん

「夢路いとし喜味こいし」師匠は昭和を代表する漫才師でした。 「上方漫才の至宝」と称される名人芸で親しまれました。 兄のいとし師匠がボケ役、弟のこいし師匠がツッコミ役でした。 思わずくすっと笑ってしまう味わいのある話芸が特徴でした。 上方では鶏…

坂本龍馬が愛した軍鶏鍋はどのような鍋か

坂本龍馬の好物が軍鶏鍋だったことはよく知られています。 暗殺された最期の日も軍鶏鍋を食べようとしていました。 注文した鍋が届く前に刺客の襲撃を受けたと伝えられています。 司馬遼太郎の小説「竜馬が行く」ではそう描かれています。 軍鶏(シャモ)と…

湯豆腐を愛した歴史上の人物といえば

太宰治は底なしの大酒呑みとして知られていますが、 酒の肴に湯豆腐を好みました。 毎日豆腐屋から何丁もの豆腐を買い求めていたので、 近所で評判になるほどだったそうです。 豆腐は酒の毒を消すというのが彼の主張ですが、 もちろんそれは酒を呑むための口…

なぜ京都の湯豆腐は美味しいのか

湯豆腐は京都の南禅寺で生まれたと伝えられています。 そのせいか、京都には美味しい湯豆腐のお店があります。 なぜ京都の湯豆腐は美味しいのでしょうか。 それは京都の豆腐が美味しいからです。 では、なぜ京都の豆腐は美味しいのでしょうか。 それは京都の…

中世の日本で乳製品が普及しなかった理由

日本にバターやチーズが普及したのは明治時代ですが、 じつは遥か昔に日本で乳製品が作られていました。 すでに飛鳥時代には、薬として牛乳が伝わっていました。 乳牛の飼育方法や搾乳技術も知られていました。 山城国や摂津国には酪農牧場があったそうです…

極上の乳製品と同じ名前を持つ天皇

現在の令和の天皇陛下は、初代の神武天皇から数えて 第126代目に当たる天皇でいらっしゃいます。 歴代の天皇はそれぞれ由緒ある名前をお持ちですが、 意外な名前の天皇もいらっしゃいました。 たとえば、第60代の醍醐天皇がそうです。 平安時代中期に34年間…

米菓の「柿の種」はなぜ柿の種の形をしているのか

「柿の種」という名前の米菓があります。 国民的に愛されているお菓子です。 誕生したのは1923年(大正12年)のことです。 つまり今からちょうど100年前です。 柿の種は、最初から柿の種の形をしていたわけではありません。 柿の種の形になったのは、ある偶…

渋柿の意外な使い道

時代劇では貧しい下級武士や浪人が内職をする場面があります。 傘張りの内職はよく見られます。 日本の和傘には「番傘」や「唐傘」などがあります。 いずれも竹で骨組みを作り、和紙を張ります。 当然、和紙は雨に濡れると破れてしまいます。 そこで傘張りを…

渋柿はなぜ干し柿にすると甘くなるのか

柿には、甘柿と渋柿があります。 甘柿は生食できますが、渋柿はできません。 じつは渋柿にも多くの糖分が含まれています。 むしろ甘柿よりも糖度が高いほどです。 では、なぜ渋柿は甘くないのでしょうか。 渋柿の渋みの原因はタンニンと呼ばれる物質です。 …

柿が大好物だった石田三成が最期に柿を拒んだ理由

戦国武将の石田三成は柿が大好物だったと伝えられています。 各武将から三成に柿が贈られたという記録が残っています。 それに対する三成の返礼の書状も残っています。 三成自身もまた、他の武将をもてなすために柿をご馳走しています。 わざわざ柿を持参し…

ハタハタはなぜ魚偏に神と書くのか

魚の名前には、魚偏の漢字で表されるものが多くあります。 たとえば、サバは漢字で「鯖」と書きます。 代表的な青魚ですから、もっともな漢字です。 タラは漢字で「鱈」と書きます。 雪のように身が白く、雪が降る寒い冬に旬を迎えます。 ヒラメは漢字で「鮃…

「つ」の字のハモ

ハモは京都の夏の味覚の代表です。 梅雨が明けて祇園祭の頃に旬を迎えます。 しかし、じつは秋にも旬を迎えます。 産卵を終えて身が肥えてくるからです。 産卵で身が細るのは、どの魚もそうです。 ハモに限ったことではありません。 寒い季節になると脂が乗…

タイでないのにタイを名乗る魚たち

「あやかりタイ」という魚たちがいます。 タイではないのにタイを名乗る魚のことです。 日本人にとって、タイは昔から親しまれている魚です。 その人気にあやかりたい気持ちはよく理解できます。 私たちが一般にタイと呼んでいるのは、マダイのことです。 目…

ムツでないのにムツを名乗る魚たち

ムツは東北地方から九州地方まで広範囲に生息しています。 そのため各地で呼び名が異なります。 カラス、カッチャム、モツ、クロッポ、ツノクチなどです。 オンシラズという面白い呼び名もあります。 子どもは浅瀬にいて、親は深海にいるからです。 ともに暮…

子どものような素朴な疑問だがのどぐろはなぜ喉が黒いのか

同じ魚でも名前が異なるのは珍しいことではありません。 地方にはさまざまな魚の名前があります。 たとえば、マコガレイは日本各地に広く生息しているので、 それだけ呼び名も多様です。 アオメ、アマチ、クチボソ、オカガレなどと呼ばれています。 また、メ…

子どものような素朴な疑問だがトビウオはなぜ飛ぶのか

トビウオが飛ぶのは子どもでも知っています。 しかし、なぜ飛ぶのでしょうか。 一般には、外敵から逃れるために進化したと考えられています。 マグロやカツオの方が、泳ぐ速度は速いからです。 水中ではいかに逃げても捕まってしまいます。 逃れる手段は、空…

赤い豆腐は本当に存在するのか

赤豆腐というと、お坊さんの使う隠語です。 マグロの刺身のことを指します。 しかし、赤い豆腐は本当に存在します。 沖縄の「豆腐よう」がそうです。 一体どのような豆腐なのでしょうか。 沖縄では昔から豆腐作りが盛んです。 それは養豚が盛んだからです。 …

赤豆腐とはどのような料理か

赤豆腐という名の料理があります。 じつは豆腐ではありません。 マグロの刺身のことをいいます。 お坊さんの間ではそう呼ばれています。 仏教では生き物の殺傷が禁じられています。 肉や魚を食べることも許されません。 しかしこっそりと食べられることもあ…

サンマのいないスダチの季節

夏が終わり、スダチが出回る季節になりました。 青々とした姿を八百屋さんの店頭でも見かけます。 爽やかな香りと酸味は、何といってもスダチの魅力です。 さまざまな料理に合いますが、焼き魚には最適です。 とくにサンマの塩焼きには、やはりスダチです。 …

ハッサクの名の由来

ハッサクは、広島県因島原産の柑橘類です。 甘みは少なく、上品な酸味があります。 そしてほのかな苦みが特徴です。 甘く食べやすい柑橘類が現代の主流ですが、 古来の独特の存在感を示しています。 皮を剥いた瞬間に立ち昇る爽やかな香りは最大の魅力です。…

はりはり鍋のはりはりとは何か

日本語には表現力が豊かな擬態語が数多くあります。 もちもち、こりこり、ふわふわ、ぷりぷり、などです。 食べものの食感を表すのにたいへん便利な言葉です。 それがそのまま料理名になることもあります。 たとえば「はりはり鍋」が、その一例です。 食感か…